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ストップ・リニア訴訟!ニュース 第7号

更新:2017/07/10

「ストップ・リニア訴訟!ニュース 第7号」の編集は飯田が担当しました(正式版のPDF)。以下、PDF版にプラスアルファの内容のHTML版を作成しました。


ストップ・リニア訴訟!ニュース

第7号 2017年7月3日発行 発行 リニア新幹線沿線住民ネットワーク

第5回口頭弁論、信州から意見陳述 / 提訴1周年記念シンポジウム

 6月23日、東京地裁で第5回口頭弁論が開かれ、原告代理人の金枝真佐尋弁護士、大鹿村の原告谷口昇さんと松川町の原告米山義盛さんが意見陳述をしました(以下に要旨を掲載)。ドローンで空中撮影された、大鹿村の釜沢地区の集落と工事現場周辺の豊かな自然環境を示す動画が上映されました。

 傍聴希望者は160名を超え今回も抽選となりました。また、提訴1周年記念シンポジウムが公判のあと衆議院第一議員会館で行われ約180名が参加しました。


地裁前集会 「リニアは理に合わない」

 私たちは、そもそも国交省は具体的に、JR東海が造ろうとしている何について認可したのか、証拠が出ていないということを主張し、裁判所もそれを出すようにいってきましたが、今回ようやく、工事申請書と付属の平面図、縦断図などが提出されました。また、国側から、鉄道事業法の特別法として全幹法があり、建設主体の指定、営業主体の指定、建設指示、それから整備計画、その過程の中で、輸送の安全性や経営の健全性についての要件が必要とされ議論されて来ているので、その過程で間違いがあれば、今回の工事認可は違法となるという理屈は認めるという書面が出されました。環境影響評価については、新幹線技術の特性から認可の時点では計画は概要で良いとJR東海は主張していますが、残土問題のように、明確な計画を出せば住民の反対が起きるので、とりあえず認可を得て、できるところから工事を始めて、そのうちに世論を都合の良いように導いて工事を完成させようとする、手の内を見せないやり方は民主的な環境影響評価や行政システムに反することを明らかにしなければなりません。次回は静岡の原告が意見陳述をします。

関島弁護士による論点解説

金枝真佐尋弁護士の意見陳述要旨

意見陳述原稿全文

 環境影響評価手続きは、地域における環境の質の確保を目指すものである。環境評価を行う対象の事業の計画内容が明確に定まっているのが大前提。さらに、地域の実情をよく知る住民や県知事などの経験と知恵に耳を傾け環境保全の調和点を模索する必要がある。

 しかし、参加人(JR東海)の計画内容は不明確であり、手続きの実績を作ることに重点を置き、現場と住民を置き去りにしている。適切な評価項目の設定ができないばかりでなく、環境影響評価手続きを実施した実績がないと評価すべきものだ。

 原告代理人は、国の認可が環境影響評価法33条に違反していると主張した。そして、(1)環境影響評価を行う対象が不明確または不確定である点と、(2)評価手続において調査・予測・評価を行うべき対象もしくは項目が欠落している、あるいは調査・予測・評価を行ったと評価できない点で、参加人の行った環境影響評価手続きは環境影響評価法33条に違反すると主張した。

 (1)鉄道事業法に基づく比較的路線長の短い在来鉄道や都市計画で決定される道路と異なり新幹線鉄道の技術的特性上、工事実施計画の認可時点では本線や駅、保守基地の配線に関わる計画が決定され、その後、用地取得や設計等を行う中で各施設の詳細な計画を決定すると参加人は主張している。しかし、大規模な環境改変を伴う工事計画が、不明確な計画内容を対象にした形式的な環境影響評価で足るとするなら環境影響評価法の主旨は全く没却される。相当程度具体的に鉄道施設が計画されることが大前提だが、長野県内では本線、非常口、変電施設、保守基地、長野県駅は環境関連図においていずれも具体的な形状や大きさは不明である。

 (2)人間の社会的活動と環境保全の均衡点をどこに求めるかは民主主義の機構を通して決定されるべきものである。環境影響評価手続きの中で反映させるべき地域の環境の実情をよく知る住民や県知事等の意見が適切に踏まえられたとは言えない。リニアに電力を供給する中部電力の豊丘村佐原の変電所と高圧送電線は参加人が建設費を負担する。ガイドウェイ組立ヤードもリニアに不可欠な施設である。いずれも環境影響評価の対象になっていない。中間駅西のトンネルの工法をNATM工法からシールド工法に変更したため工事ヤードや発生土の運搬ルートが変更されたが環境影響評価をしていない。長野県内のリニア建設発生土約950万立米の置場は環境影響評価の時点で確保されず、評価はされていない。住民は三六災害等の経験から急峻、脆弱な地形と地質を持つ伊那谷に発生土を置く危険性を十分に認識しているが、環境影響評価においてこの知見が活かされなかった。

 長野県知事は参加人の採用する高橋の水文学的方法は山岳トンネルにおける断層や破砕帯による突発的な湧水を予測できるものでないと指摘しているが、この手法による予測結果を修正しようとしない。トンネル掘削により小日向山銅山の鉱脈に当たる可能性があり、土壌や水質の汚染の可能性があり、長野県環境影響評価技術委員会も懸念を示し工事中の監視と事後調査を要請したが、参加人はこれらを実施しないとしている。

 大気汚染について県技術委員会は環境基準を満たすだけでなく従前の環境を基準に影響を可能な限り回避、低減させる必要と、また通年調査の必要性を指摘したが、調査は連続1週×4季のみと、空気の清澄な地域の実情を踏まえた評価ではない。

 元々交通量が少ない県道235号線や国道152号線の沿線について、交通量の多い幹線道路の騒音基準の70dBを基準とした。どこも静謐な大鹿村では住民の賛同を得難い。振動についても同様である。

 多数の工事車両や運搬車両の通行は、大鹿村内のような道路の狭い地区では交通事故の危険が増大する。道路の耐久性も損なわれる。数値上は問題ないとされても、参加人の評価では運転者の心理的圧迫感は表現できていない。

 県環境技術委員会では騒音や振動が野生動物に与える影響を危惧する意見が出されたが、参加人は知見がないと回答し調査をしていない。また猛禽類の代替巣の成功例がないという指摘にたいしても代替巣の設置をすると主張している。

 景観の調査地点の選定に住民の意見が取り入れられていない。調査地点はいずれも鉄道施設から遠方であり、影響を受ける近隣住民にとっての景観の改変が評価の対象になっていない。

 影響評価手続きにおいて、参加人は住民や知事等の意見を十分に反映させていない。上述以外にも調査が不十分、基準が不適切な項目があり、調査・予測・評価を行うべき対象又は項目が欠落している、あるいは行ったと評価できない。

 環境影響評価を行う対象が不明確または不確定であるという観点、あるいは、環境影響評価手続きにおいて調査・予測・評価を行うべき対象もしくは項目が欠落している、あるいは、調査・予測・評価を行ったと評価できないという観点から、国交大臣の行った認可は裁量の逸脱・濫用があり、環境影響評価法33条に違反する。

谷口昇さんの原告意見陳述要旨

意見陳述原稿全文

「最上流に暮らす人間として、下流に住む多くの生命に対する責任がある」

 大阪で生まれ育った私は山や田舎に行くたび心が元気になるのを感じていた。平成20年に初めて大鹿を訪れ、目の前に聳えたつ赤石岳連峰やこの奥地で生き抜いている人々の姿が心に焼き付けられた。平成22年4月に大鹿村釜沢地区に移住が叶った。引っ越し先の隣家のご家族が入れ替わりに引っ越された原因が、JR東海の行った水平ボーリングの騒音であったと後日知った。


大鹿村釜沢のドローン映像。


作業場所(騒音源)と集落の位置関係。工事ヤードに通じる三正坊橋は最近、県建設事務所により重量4トン以上の車の通行が規制され、工事用の大型車両は通行できない。谷底の作業音はメガホンの出口にあたる集落に直接届く。写真のさらに下方の釜沢斜坑口は工事開始が1年遅れる。除山斜坑も4月27日以降掘削は進んでいない。

 釜沢集落は3000m級の南アルプスに最も近い集落の一つ。小渋川と小河内沢の合流地の斜面に10軒が暮らしている。狭く深い谷底からは軽トラックがエンジンをかけてもよく響き渡る。希少植物や希少猛禽類、クマを始め山の生物が多く暮らしている。

 南アルプスは平成26年にユネスコエコパーク、生物圏保存地域に登録され、生態系の保存と自然と人間社会の共生を目的とした取り組みが行われる場所として注目されている。

 日本人は自然に畏敬の念を抱き、信仰対象としてきた。自然がもたらす水が人々や森の生命を長く安定的に育んできたからだ。南アルプスの深い山に蓄積され、森の養分を含んだ水は、山の各所からゆっくりと湧き出し、太平洋に達するまでの間、静岡、山梨、神奈川、長野、愛知を流れ、あらゆる生命を育んでいる。私たちは最上流に暮らす人間として、下流に住む多くの生命に対する責任がある。

 平成26年、2回目のボーリング調査の説明会で、住民からリニア計画が自然環境や生活環境への懸念について質問が出ると、JR東海の担当者は「国が認可した事業なので大丈夫」とか「できるだけ影響がでないようにします」等、漠然と答えるだけで具体的なことはまだ解らないというばかりだった。

 釜沢地区の生活水源のすぐ近くに計画される非常口について、住民が水源への影響について質問すると、「じゃ逆に聞きますが、水が抜けて一体誰が損害を受けるんですか?」と言い出す始末に呆れた。自然環境や住民の生活に対するJR東海の考えがはっきりした。

 全村対象の説明会でJR東海は住民の合意がないと事業はできないとしながら、住民が合意したとは具体的にどういう段階かという問いに、合意ができたかどうかはJR東海が判断するものとした。事業者自身がみなした合意が住民の合意といえるのか。村議会の議論も不十分なまま平成28年11月には起工式が行われた。JR東海が住民の合意を得ることは考えていないことが証明された。

 環境影響評価についてJR東海は法律に則った手続きをしているとするが、本当に影響評価を行ったか疑問点が多々ある。

 方法書では駅は直径5㎞の円、路線幅は3㎞で示されたが、実際には路線や坑口は決めてあり環境調査はその周辺の狭い範囲しかしていない。

 除山非常口は当初の予定を変更して計画されたが、他の場所は600m範囲で植生調査がされたのに、ここでは200m程度の範囲にとどまった。県知事意見に従い600m範囲で調査がなされたが結果を待つことなく評価書は確定し認可された。

 トンネル残土の行き先が未定のまま環境影響調査が終わり認可がなされた。大鹿村から出るトンネル残土の最終的な行き先は決まっていない。

 変電所への送電線について住民は一貫して地中化を求めてきたが、JR東海は中部電力の問題として回答を避けてきた。中電から示されたフォトモンタージュで送電鉄塔が「日本で最も美しい村」連合に加盟する大鹿村の景観を著しく損なうことが確認された。そのほかにもJR東海は指摘を受けた部分を事後調査で対応するといい、多くの問題点を残したままで着工に踏み切った。事後調査で大問題が見つかったとき、近隣住民や自然環境に対してどのように責任を取るのか心配だ。

 地形が急峻な大鹿村に約300万立米のトンネル発生土の置き場はなく、ほとんどを村外に搬出することになる。準備書では、生活の中心地の国道152号線、村外への通勤・通学などで重要な県道59号線を1日最大1736台の大型工事車両が通行することが示された。国道沿いには保育園、小学校、デイサービス、宅老幼所、授産所など村の重要な施設がある。保育園児の保護者にとっては不安は絶えない。住民は迂回路を通行するよう要望したが迂回路の完成を待たず工事に着手してる。県道59号線は2つの新設トンネルや5か所の拡幅など現在改良工事が行われているが、他のボトルネックとなる場所は残されている。迂回路や道路改良を村は求めてきたが具体的な計画が定まる前に環境影響評価が確定し国交省は認可した。

 釜沢地区に至る住民の生命線、県道235号線は大型車が通過できないほど狭く曲がりくねっている。拡幅工事が済むまでは工事車両を通さないよう住民は要望していたが、拡幅途中でJR東海はトンネルの掘削を開始した。そのため県道235号線を通ろうとした大型車が小1時間立ち往生した。JR東海は車両台数を減らすために釜沢で唯一の平坦部の農地に発生土の仮置きをすると言っているが、釜沢地区住民にとってはどちらの拷問がよいか聞かれているようなものだ。

 国交大臣は、地元住民への丁寧な説明を通じて地域の理解と協力を得ること、国交大臣の意見を踏まえた環境の保全、南アルプストンネル等の安全かつ確実な施工、この3つの確実な実施を認可の条件としてJR東海に求めている。JR東海はこれらの条件を無視して、思い通りに早く工事を進めたがっている。JR東海が明解な説明をしないのは、JR東海自身必死で訳がわからなくなっているか、公表すると都合の悪い事実があるからではないか。

 先人が大切にしてきた豊かな自然環境により私たちは生かされている。不誠実で無知なJR東海にこの巨大な自然環境破壊事業を任せてよいのか。事業の先行きは見えない。戦後、環境保全より経済活動が優先されてきたが、生活が便利になった反面で沢山の大切なものが失われた。自然を感じながら暮らしたい、自然を学びたいと田舎を訪れる若者が増えている。自然環境に対する意識や態度の見直しが進む現在、この事業に認可を与えた国交省に憤りを感じる。きちんと説明しない、まともに調査する気もない、住民の意見も聞かない、国交大臣の条件もにも不誠実であるような事業者の実施する事業は百害あって一利無しであり、即刻白紙撤回すべきである。すでに工事は始まっているが、あらゆるものの命の根源である希少となった自然の傷が浅いうちに事業が止まることを切に祈る。

米山義盛さんの原告意見陳述要旨

意見陳述原稿全文

 伊那谷は昭和36年6月末に三六災害と呼ばれる大規模な災害に見舞われた。各地でがけ崩れ、山津波、河川の氾濫が起き、死者不明136名、全半壊家屋が1500以上に及ぶ甚大な被害で、当時は羊満水(ひつじまんすい)以来の災害と言われた。

 昨年6月豊丘村では一旦発生土を置くことになった伴野区小園の2つの沢筋について、沢の直下の住民たちが、三六災害の経験から「頭の上に金魚鉢を置いて寝るようなもの」と反対の声をあげた。住民の不安を払拭しうる説明材料を持たなかったJR東海は処分地としての使用を断念した。

 豊丘の本山地籍では虻川支流のサースケ洞最上部の本山生産森林組合の山林内の谷に130万立米の発生土を置く計画があった。JR東海の環境調査に対して日本科学者会議長野支部が、発生土の滑りだす可能性について2次元モデルではなく3次元モデルで検証すべきとの意見書を出した。治山関係者は100万立米という大規模な盛土で谷を埋めることは想定外といっている。虻川下流域の住民からも、署名を添えた受け入れ反対の要請が豊丘村に出された。その後、本山生産森林組合は組織運営が法に則っていないことが判明し、長野県は受け入れの承認を無効とした。

 大鹿村に隣接する松川町生田地区の寺沢川沿いの丸ボッキ(30万立米)、つつじ山線(100万立米)、本洞(490万立米)の3ヵ所を松川町は発生土置場候補地として情報を長野県を通じJR東海に提供した。三六災害では生田地区でも至る所で土石流による被害が生じた。この経験から下流域の福与区のリニア工事対策委員会は町に対して発生土を置かないようJR東海に求める要請をした。また同委員会は発生土について学習会を開き、講師の桂川雅信氏より生田の3地区の候補地は盛土が滑りやすいこと、安全に埋め立てるには盛土内部の排水のため集水井戸から集水パイプを扇状に土中に配置し、また地下水位を常時監視するなどの対策が将来にわたり必要との指摘を受けたが、それらが未来永劫行えるとは思えない。

 下條村では国道151号線沿いの谷が候補地になっているが、谷筋に沿って断層があり、大変危険だ。阿智村ではダンプカーの走行が交通事故の危険を増大させるとの理由で、谷の上流部に発生土を置く検討をしている。現在の交通事故の危険も将来の災害の危険もリニア新幹線の工事実施計画を断念すれば回避できる。

 伊那谷では、現時点で計画通り確定した処分地は皆無。伊那山地の谷は風化しやすい花崗岩からなる崩れやすい地質。現在JR東海が検討しているのはこの崩れやすい伊那山地の谷や沢。水が削ってできた谷や沢を人為的に埋め立てるのは元来危険な事である。JR東海は災害発生の危険についてせいぜい数十年の短いスパンでしか考えていないが、住民は数百年単位で考えている。下流域の住民は発生土による災害を強く危惧している。JR東海が検討中の飯田市下久堅小林や竜江番入寺西も下流に集落がある。置けば、将来に渡り危険を感じながら生活することになる。

 発生土置場がなければトンネルは掘れずリニアはできない。JR東海は発生土の活用の見通しや、谷や沢を処分地とする危険性について、なぜ計画段階で綿密に検討しなかったのか。また国交省は膨大な量となる発生土の処分方法が盛り込まれていない工事実施計画をなぜ認可したのか。

 飯田市上郷飯沼の北条地区では本線トンネルを北条地区から掘り始めることに変更されたので、トンネル工事ヤード、発生土搬出ルート、一級河川新戸川の水路変更、駅周辺整備、アクセス道路の整備等で、工事範囲の拡大に住民は気掛かりな日々を過ごしている。

 JR東海は最近になって壬生沢川そばに新たな斜坑口と工事ヤードを探している。

 リニアだけに電力を供給する中部電力の容量600MVAの超高圧変電所と延長14㎞の送電線の設置計画は平成27年6月まで住民には知らされなかった。全体で12Haのリニアガイドウェイ組立ヤードの計画も平成27年の6月に知らされた。いずれも優良農地。特に高森町の候補地では、天竜川右岸の水田開発の歴史が目の当たりにできる文化的に価値のある景観が失われる。これらは工事実施計画に記載されず、環境アセスメントの対象でもなく地元住民は騙されたという感情を抱かざるを得ない。

 リニアの利用客1日6800人という数字の根拠について住民は納得のいく説明を聞いていない。この過大な予測をもとに駅周辺整備やアクセス道路の整備が計画され移転先の確保もできていないのに移転対象者が増えている。

 住民の理解を得られないまま、2027年の完成に向け工事が進められているが、すでに工事は1年の遅れが出ている。残り10年で完成させるため、安全よりも工事の進行を重視して、工事関係者や住民の生命、身体に危険が及ぶことを危惧する。南アルプスを始め貴重な自然に回復不可能な損害を与える計画は、地域住民の生活を無視するだけでなく、自然への畏敬の念を忘れている。国土の保全が任務の国交省は自然に対する謙虚な姿勢でもって、その破壊に手を貸すような認可はすべきでなかった。リニアの工事が早々に止まるように裁判所の正しい判断が下ることを求める。

提訴1周年記念シンポジウム

Youtube:20170623 UPLAN 斎藤貴男「暴走するリニア新幹線」他

 シンポジウムは原告副団長の原重雄さんの「リニアは葛西名誉会長の野望」という挨拶の言葉で始まりました。基調講演で斉藤貴男さんは、葛西氏の野望は、日本の富裕な支配層が目指す、原発やリニアなどインフラ輸出と資源権益と邦人保護というセットの「帝国主義の野望」につながるものと指摘しました。パネル討論で川村原告団長は、責任を問わない風潮がある日本の政治風土の中で、なぜ国がこのひどいリニア計画を認めたのかを問う行政訴訟の選択は良かったと述べました。立法学者の五十嵐敬喜さんは、行政訴訟に裁判員制度を取り入れることを国会で論議すべきと指摘しました。橋山禮治郎さんは、国民の共感を得るには今後は制度、政策決定の意思決定の仕方の問題点を突くべきで、総括原価方式による査定の必要性を指摘。東京経済大の礒野弥生さんは、環境裁判では中身に入らせる必要があること、リニアアセスの杜撰は住民の意見など情報収集がなっていなかったと、日本自然保護協会の辻村千尋さんは、昨年9月に世界自然保護会議(IUCN)で異なる生物地理空間を越えた土砂の移動は止めなさいという決議が出されたこと、また種の保存法が改正され、絶滅危惧種の国民提案制度が法定化されたこと、生息地保護等保護区の提案もできるようになったことを話されました。残土問題はリニアのアキレス腱という話題も出ました。JR東海労の成田さんは、リニア推進のため社内ではコストカットが行われ、下請けの労働者までしわ寄せが出ていること、地上を走る新幹線でも事故のとき乗客を誘導するのは難しいのに、さらに外界と途絶した大深度を走るリニアではもっと困難になると語りました。ほかに熊森協会からの発言もありました。今後裁判は、環境問題についていろいろな専門家の意見をきき、議論を深めて裁判所に提起していく予定と関島弁護士は語りました。川村原告団長は、リニアは高度経済成長の時代の図式の蒸し返し、高度経済成長の夢を追い続けるのかどうか、それは私たちの生き方の問題にも通じると、斉藤貴男さんはリニアの問題を批判することは社会全体を、さらにインフラ輸出先の国々の人々を守ることにもなるので、この裁判は非常に意義があるとまとめました。