更新:2021/09/23

裁判後院内報告集会の動画

 第20回口頭弁論後の報告集会と記念講演の動画が youtube にアップされました。冒頭の弁論の報告部分が入っていませんが、小泉武栄さんの公演は全体が収録されています。一番最後のほうですが、会場からのトンネル技術者の発言が興味深いです。

飯田リニア通信 更新:2021/09/13

第20回口頭弁論の速報

 ストップ・リニア! 訴訟の第20回口頭弁論が9月10日に東京地裁で行われました。リニア新幹線沿線住民ネットワークから速報が届きましたので紹介します。

 また、ジャーナリストの樫田秀樹さんがブログで紹介しています。

 報告集会の記念講演で小泉武栄東京学芸大名誉教授は、「南アルプスの破砕帯には幅80~100mクラスの破砕帯が何本もあり『工事が断層にあたる度に大出水が起こり、工事はストップするだろう』」(樫田氏による)と指摘しました。南アルプストンネルの長野工区では、除山斜坑で2回(2019年の夏と2020年の1月から)、小渋川斜坑先の先進坑で2回(2020年の夏と2021年の1月から)、約3か月間トンネルの掘削が進んでいない時期がありました(大鹿村:リニア中央新幹線情報)。原因はともかく工事が停滞することが起こっています(トンネル内部の原因以外に、現場へ通じる県道の地滑りで、2021年7月から約半年除山斜坑と釜沢斜坑の工事が止まっています)。

 報告集会の参加者にトンネル工事の専門家がいて、南アルプスのトンネル工事は止めるべきだと発言していました。また、これまでのトンネル工事で水枯れなど水資源に大きな被害を与えた例についても話されました。


(速報)ストップ・リニア! 訴訟ニュース

2021.9.13 リニア新幹線沿線住民ネットワーク
http://linearstop.wix.com/mysite

リニア工事残土処理
~環境影響評価をせず
安易な盛り土で土石流 や崩落の危険

9月10日 第20回 リニア訴訟口頭弁論で原告側意見陳述

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 9月10日午後3時から、ストップ・リニア訴訟の第20回口頭弁論が東京地裁(103号法廷)で 開かれ、事前の抽選で選ばれた45人が傍聴しました。法廷では、原告側がJR東海の工事残土処理について環境影響評価手続きを踏まずに、谷や河原や鉄道施設の盛り土に使用することは、大雨によって土石流や河川のせき止めなどの住民被害や自然影響につながると指摘した準備書面33を提出しました。そしてその要旨を原告側代理人の 半田虎生弁護士が意見陳述をしました。

 この後、市原義孝裁判長から今後の審理について原告側、被告側に意向を聞かれ、原告側は橋山禮治郎氏、松島信幸氏、阿部修治氏らの意見書提出と法廷での証言を行うよう要請しました。被告側 は 反論 や主張 の準備書を提出したほか 今後も争点について争う姿勢を示しました 。 原告側は、リニア山梨実験線の被害について裁判官による現地見分を改めて要請し、裁判長は、「現地に行くことはやぶさかではないが、コロナ禍で移動は難しい状況である」として、今後状況を見ながら現地見分について検討する意向を示しました。

 リニア訴訟の次回口頭弁論は12月2日(木)に決まっていましたが、この日の法廷で次々回は来年3月10日(木)と決まりました 。(開廷時間はいずれも午後2時

リニアの残土処理の現状と計画は環境アセスを受けず、地域の条例にも違反している 準備書面33の要旨

<静岡県熱海市の土石流被害>

 2021年7月1日から3日にかけて、東海地方、関東地方南部を中心に記録的な大雨となり、静岡県の複数の地点で72時間降水量の観測史上1位 を 記録した。 この大雨 により 静岡県熱海市伊豆山地区で土石流が発生し、逢初川の源頭部から5万4千立方メートル余りの土砂が土石流となって海岸近くまで約2kmを流れ下った。被災した範囲は幅120m、長さ1㎞に及んだ。

 この土石流によって、8月24日時点で25人が死亡し、3人が行方不明となっている 。また128棟(135世帯)が被災し、177人が避難生活を余儀なくされ、 水道などのライフラインにも大きな被害が発生した。

 静岡県は7月4日の臨時の記者会見で、伊豆山地区の盛り土部分がほぼ全部が滑り、土流となって流されたことを明らかにした。 実地検分の結果、 盛り土の工法等に不適切な点があり、行政指導等が繰り返されながらも、安全上問題がある盛り土が放置されてしまったと総括している。

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 土石流発生のメカニズムだが 、 盛り土の高さが35から50mの高い盛り土であったにも関わらず排水処理も 行っていなかったため、降水量 の 流入と地下水の流入により盛り土内の地下水位が上昇、次第に表層の小規模崩壊が始まった 。そして地下水位の上昇で盛り土の下部における水圧が高まり盛り土下部から水が噴き出すパイピング現象が発生、支持を失った盛り土上部が連鎖的に崩壊し、大規模な土石流となって滑り落ちたとみられる 。

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(写真・イラストは静岡県公表

 盛り土による土石流災害 という リスクを受けて、国土交通省は7月9日、緊急に盛り土の可能性のある箇所の抽出を行い、点検を行うことを表明した。

 本件リニア工事では、発生土が大量になることを宣明しながら、環境影響調査が十分に行われてい ない 。

<神奈川車両基地に関する盛り土の危険>

 神奈川県相模原市のリニア鳥屋車両基地建設に関し、JR東海はそもそも盛り土等の土地改変行為について環境影響を評価しなければな らない 。盛り土部とされている箇所は土砂災害防止法に基づく土砂災害特別警戒区域、土砂災害警戒区域と重なる部分が存在している 。しかし本件評価書では ハザード 対象になっていることを踏まえた環境影響を評価した形跡はなく、 同指定で考慮された危険性が解消されているかも判然としないまま、車両基地の存在による傾斜地への安全性への影響は小さいと予測している 。

<発生土置き場等について実施すべきである環境影響評価手続き>

 発生土置き場の設置については静岡県を除き、環境影響を調査し、予測し、これに基づいて環境保全措置を検討するというアセス法令が想定する環境影響評価の手続きを履行していないから、この時点で瑕疵があるものと考え られる 。発生土置き場を設置す る ということは、発生土置き場に土砂を搬入し、これを積み置く必要が生じるため、必然的に盛り土が発生す る 。盛り土については、森林法、宅地造成陶器施法、都市計画法などで規制対象になっていることから分かるように、軟弱地盤、地すべり、土砂災害の原因となりうるのである。

 アセス法令の要求する 環境影響評価手続きが実施されていない以上は、本件の評価書は瑕疵のある評価書というべきであり、評価書を判断する基礎とする国交省の環境配慮審査も判断の基礎となる事実を欠いており、」裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用した判断というべきで ある 。

<豪雨災害の増加 は確実>

 人為的な温室効果ガスの排出によって気候変動が発生している、その気候変動により短時間の強雨や記録的な大雨の発生確率が科学的に実証されてい る 。 気象庁は現在の温室効果ガスの排出基準が維持された場合、100~400ミリの各地の降水量の基準が全国平均で2倍以上になると予測している。

 東日本太平洋側で見ますと、日降水量100mm 以上の大雨の年間発生回数は現在1~2回であるところで ある が、将来気候では2~3回になり、日降水量200mm以上の大雨の年間発生回数は現在気候では約0.2~0.25回であるところ、将来気候では0.3~0.5回に増えることにな る 。それに加え、「バケツをひっくり返したような雨」(一時間30mm以上)や「滝のように降る雨」(一時間60mm以上)の発生回数も増加し。後者については年間発生回数が平均で2倍以上になると予測されてい る 。これは今明らかになったことではなく、2013年の時点でこのような予測が出されてい る。

 それゆえ 、被告は工事実施計画の認可処分時点で 豪雨災害の増 加や それに伴う土砂災害増加のリスクを十分に認識しえたのであり、環境影響評価手続き に重大な瑕疵があったというほかない。

<各地の発生土処理・盛り土の実態>

① 長野県の発生土置き場(伊那谷における土砂災害の経験)

 伊那谷では1961年(昭和36年)の梅雨末期の集中豪雨により 各地で土砂災害が発生し134人の死者を出した。今でも三六災害と呼ばれたその記憶は住民の間で受け継がれている。リニア新幹線の発生土処分の予定地はいずれも三六災害があった地域である。参加人(JR東海)が予定している伊那谷の主な発生土置き場は10か所に及んでいる。

② 長野県の発生土置き場(130万㎥ と 最大規模)

 一級河川虻川の上流の支流であるサースケ洞のさらに上流のジンガ洞を埋め立てる面積8.5ヘクタール、全長800m、最大幅350m、盛り土の厚さのある部分は50m、受け入れ容量は130万㎥の計画である。

 リニア工事関連では一つの谷としては最大規模となる。

 ジンガ洞周辺は風化しやすい花崗岩で小規模な崩落は常に発生している。人口の多い虻川下流までの距離は8㎞だが、砂防ダムが決壊すれば、影響が虻川最下流まで及ぶ可能性がある。

 現在虻川流域では本山のほかに戸中(とちゅう)の下沢(くだっさわ)でも26万㎥の発生土置き場の整備が進められている。

③長野県の発生土置き場(大鹿村の危険な発生土置き場)

 大鹿村では恒久的な発生土置き場が釜沢地区の旧荒川壮跡地に設置されてい る 。その総量は3万立方メートルである 。外周部はジオテキスタイルを用いた補強盛り土となっているが、ほぼ垂直に近い法面は見た目でも危険性を感じる。

 大鹿村では広い平地がないため、農地転用した三生坊の土地をJR東海が借り入れそこに発生土を積み置いている。 鳶ヶ巣沢は、谷埋め土ではないが、小渋川の河川敷に約30万㎥の発生土を45mの高さに積み上げる計画である 。ここは三六災害で水が流れた場所でもある。

④長野県の発生土置き場半の沢に53万㎥ 、下條村に100万㎥

 上伊那郡中川村の半の沢 は53万㎥の盛り土をして半の沢橋の代わりに道路を造る計画だ が、これが崩壊した場合は約3.3km下流の渡場地区への水害が心配される 。

 下條村の睦沢地区の火沢には100万㎥を埋め立てる計画がある 。心配なのは谷を活断層が通っていることだ 。地質的にも崩れやすい場所である。計画地の上部には、やはり谷埋め盛土で1995年頃建設された道の駅があり、既に最下部の法面が2か所で小規模な崩落をしており、この古い盛土が崩壊した場合に新たな盛土がどういう挙動をするかも心配である。

⑤長野県の発生土置き場(松川町では地区の反対で処分地撤回も)

 松川町の生田地区では、30万㎥、100万㎥、490万㎥の発生土を三つの谷に置く計画がったが、地区の反対で2か所が撤回され、現在は寺沢川の最上流にあたる谷に30万㎥を置く計画が残っている。寺沢側は三六災害で大きな被害を受けている。

<山梨県早川町のトンネル工事発生土>

 山梨県早川町ではリニア新幹線南アルプストンネルの掘削工事が現在進行中であり、工事は本坑に進んでいる。そして掘削による発生土が狭い早川町内にすべて処分 されている。早川工区からの発生土は総計326万㎥と見込まれているが、は制度のどこにどの程度置くのかが明確ではなく、環境影響評価の段階では「早川町大原の塩島地区に4.1万㎥、その他は早川芦安連絡道路ほか」との記載のみであった。その後参加人(JR東海)は本件工事認可後に早川町内に1か所、仮置き場8か所であることを明らかにした。

 芦安道路造成に160万㎥、カッパ沢の埋め立てに120万㎥を使うとされているが、カッパ沢の埋め立ては20万㎥だけ使ったというだけで、その他の 発生土 は仮置き場に積み立てようとしている。仮置き場は早川に沿った県道37号線のわきに設置されているが、糸魚川・静岡構造線の断層が走り沿線は山体の崩壊地が散在し土砂災害が危惧されている。

<神奈川県相模原市の鳥屋車両基地>

 相模原市の鳥屋地区における関東車両基地の造成は山の中央部分を切土し裾野部分を盛り土したうえで施設構築を行うとされている。発生土量は360万㎥で高さは30m程度になると予想される。

 大きな地震による影響も心配されるが、環境影響評価では深度5強~6強の 揺れに擁壁が度の程度耐えられるかという評価はされていない。

工事の認可を取り消さなければならない

 環境影響評価において発生土の処理方法はほとんど特定されておらず、時宜アセスという形で後回しにされている。盛り土がもたらす土石流のリスク及びこれによる人命、人家、人の生活等へのリスクは一切考慮されていない。環境影響評価法の目的を損なうものであり、認可は撤回されなければならない。

以上

地裁前集会で各団体から連帯の挨拶

 午後2時15分から東京地裁前で集会が開かれ、 連帯の挨拶の中で 外環ネット の参加者はは「 JR東海は大深度工事を進めるため東京外環道の道路陥没の嘘の調査結果をもとに、トンネルを掘ろうとしてい る」と指摘しました。 また7月19日リニア大深度工事差止の訴訟を起こした田園調布の住環境を守る会からは、「10月26日に裁判が始まる。JR東海の沿線住民無視の姿勢を改めさせ一緒に工事を差止めよう」の呼びかけがありました。

報告集会で川村原告団長が「活動強化を!」

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 午後4時から衆議院第二議員会館で 報告集会が開かれ50人が参加し、20名がリモート参加しました。冒頭、川村晃生原告団長が「コロナ禍でJR東海の経営に影響が出でいる。このままでリニアの実現が可能なのか疑問である。先日JR総連が立憲民主党の国土交通委員長と会ってリニア事業について見直しを求めた。こうした状況は現状を変えるチャンスだ。各地域でそれぞれの自治体がJR東海とどう向き合っているのか、協力しているのかをチェックしリニア事業について見直しを求める活動を強化する時に来ている」と強調しました 。

リニアシンポで小泉武栄氏 (東京学芸大名誉教授)が「リニアが壊す南アルプス」で講演

 小泉氏は講演で「南アルプスの複雑な地層と数多くの断層と大量の降水量により豊富な地下水が蓄えられていると指摘し、リニアのトンネル工事により地下水が噴出し水位が300mを超えるほど低下することにより、高山植物や動物の生態系に甚大な影響を及ぼす」と述べ、貴重な南アルプスの自然を壊すリニア工事を行ってはならないと 断言しました。