第10回口頭弁論とリニア・シンポジウム報告

更新: 2018/06/28

 6月25日、月曜日東京地裁でストップ・リニア訴訟の第10回口頭弁論が行われました。口頭弁論後に裁判の報告集会と3人のジャーナリストを迎えリニア・シンポジウムが衆議院第一議員会館内で行われました。原告団事務局から速報が届きました。⇒ PDF:車両基地などの正確な位置や規模が不明のアセスによる認可は違法 6月25日、ストップ・リニア!訴訟第10回口頭弁論と報告集会 (速報)

 飯田から4名が参加しました。報告します。


もくじ

地裁前集会
法廷のようす
 ・関島弁護士・意見陳述
 ・和泉弁護士・意見陳述
 ・横山弁護士・上申書
報告集会とリニアシンポジウム

報告集会資料
実験線工事計画の経過
技術開発期間の延長について
横山弁護士・上申書
リニア工事実施計画(その2)認可取り消し求め審査請求書486通を提出
JR東海「リニア・鉄道館」の「出張授業」についての申入れ
「リニアで変わるやまなしの姿」
シンポジウムの案内チラシ
シンポジウム、発言者のプロフィール

 開廷の前に、いつも通り地裁前で集会が行われました。

 [ 川村原告団長の挨拶 ] 10回目の口頭弁論の期日になった。暑い中、また遠くから沢山の人に来てただいてありがとうございます。裁判のほうは新しい局面を迎える。これまで各地域の住民が地域の被害について意見陳述をしてきた。一応それが終わり、国と私たちとの間での、国の反論を受ける形で私たちが再反論をするという形の進行に移りつつある。そして将来的には私たちの主張が正しいことを証明するための承認申請を行っていくという段取りになると思う。

 突如として、この数週間の間に、皆さんのところへ、異議申し立ての意見陳述について国交省から通知が届いていると思う。ずいぶん間の抜けた時期に思うが、せっかくのチャンスなので、私たちの主張を国交省に向け主張し続けていきたいと思う。

[ 弁護団事務局長・横山弁護士のあいさつ。(参考:上申書、2018年6月19日 報告集会資料、p3)] 今回は2通の書面を裁判所に出した。一つは、環境影響評価に関して、出来る施設の形状や大きさ形がきちんと分からない限りは環境影響評価は本来できないはず。切土するとか盛土すして造るとはいうがどんなものを造るのか明らかにしてこなかった。全幹法ではそのような細かいところまで事前に決める必要はないのだと言っているが、実際に環境影響評価をするということであれば、少なくとも、こういうものを想定して造るということが出てこなければ環境影響評価はできない。例えば鳥屋の操車場。どういうものができるのか明らかになったのは認可の降りたあと、住民への説明会の中だった。それまでは地図に長方形が書いてあっただけだ。どんな大きさの、どんな高さのものができるのかそういうことが分からないままだったのに、環境影響評価は行ったと主張している。それが適切だったかどうか検証できないことが大御問題だ。そういう反論を上げている。

 また、山梨の実験線についてこちらが提起した質問への再反論の書面が国からでている。JR東海からは、われわれが出した各地の環境評価の問題点に対する反論の書面が出ている。3通でているが、一都六県で7通となるはずなのに、まだ3通しか出てこない。いままでなにをしていたのか考えると非常に腹立たしい思いがする。きちんとした反論をしてこなかったのは明らかだ。さすがに裁判所から9月の期日までにと厳しく言われたので、JR東海のほうは11月までにと、いっているが、9月までにと強く迫りたいと思っている。

[弁護団共同代表・関島弁護士のあいさつ] これまで2年間ほど、一都六県の原告の方が各地の被害について意見陳述をしてきたが、これからは弁護士だけの陳述になっていくと思うので、若干裁判は事務的なやり取りのような感じになるかもしれないが、基本的には環境影響評価でどういう点が問題かということを証拠を元に裁判所に訴えることには変わりはない。

 今日は特に、環境アセスに関して国もJR東海も鉄道施設の具体的な形の物を示したことがない。それが示されなければ環境がどのように影響をうけるか分からずで不完全。訴状から一貫して主張していることで、今日の準備書面の中でも要点である。

 大井川上流のツバクロ沢に残土置場が計画されているが、何立米の残土が積まれるなど具体的な事柄がアセスや認可の段階では示されていなかった。認可のあとになって静岡県との協議の中で360万立米を持ち込んで高さ65mにもなる巨大な残土置場を河川敷に造ろうとしていることがわかった。今回の国側の準備書面には、アセスの段階では具体的なことは決まっていなかったのだからアセスの必要はないとふざけたことを述べている。最初はあいまいにぼかしておいて、認可の後、工事が具体化する段階で住民に説明しつつ事後アセスをすればよいのだという主張をしている。残土は東京・名古屋間で6000万立米近いものが出てくる。処分先は1割程度しか決まっていない。残土置場が決まらなければトンネルは掘れないのが今の現状だ。施設の特定、残土置場の特定によって、さらに環境問題が起きる。今日はこういう点を指摘する。

 昨年12月に中川村でトンネル工事の発破により土砂崩れが起き、道路通行に数か月に渡り障害がでた。この問題も証拠の一つとして、工事の難しい地質の地域でリニアのトンネル掘削の危険性を指摘したい。

 和泉弁護士は、山岳部のトンネルの避難路の問題について、乗客は安全に脱出できるのか、アセスやこれまでの審議の中でも議論された形跡がない点について議論する。最近東海道新幹線の車内で殺傷事件や焼身自殺事件があったが、こういうことが南アルプスのトンネル内で起きたらどうなるのか。リニアは危険と隣り合わせの乗り物であることの認識や安全対策について明らかにしたいと思う。

[ 6月22日のJR東海の株主総会にあたり、会場前で行った宣伝行動について名古屋の小林さんの報告 ] 談合騒ぎを受けての総会ということもあり、今回は沿線住民ネットワーク全体のとして宣伝行動を行った。「リニアを問う愛知市民ネット」、「リニアを考える愛知県連絡会」との共同で行った。約20名が参加、約1時間半にわたり、リレートーク、400枚ほどのチラシ配布など行った。このまま工事を続けて株主の皆さんが後々損害を受けても良いのかというような訴えをした。会場はマリオットホテルの上部の階で声がどれだけ届いたかは分からないが、会場へ行くため前を通る株主が聞いたのではないかと思う。総会の日の宣伝行動は提訴前からやってる。JR東海のクレームが来るので街宣車で宣伝できる許可をとって行っている。

[ JR東海労働組合本吉書記長のあいさつ]  訴訟に共に闘う立場で参加している。6月9日東海道新幹線で安全が脅かされる事態がまた生じた。刃物による殺傷事件で1名の方が亡くなり、2名が重傷を負われた。組合から事件について会社へ申し入れをし議論をするつもり。まだ交渉は進んでいないが、金属探知機のようなものの設置に関するマスコミの質問に金子社長は鉄道の利便性を損なうので設置の考えはないと答えている。乗客の安全を考えていない。多少利便性を損ねてもコストがかかっても乗客、乗務員の安全を守るためには、考えられるすべてのことをやるべきでないかと私たちは思っている。リニアについてはトンネル内でこういう事件、火災等の事故が起きたとき、どういう体制で乗客、乗務員の安全を守るかとうことが全く不透明。これまでリニアの安全性確保について訴えてきたが、ここにきてまたリニアの安全性についての不安が浮き彫りになった。

 もう一つ、リニアは会社の経営を圧迫するのではないかと指摘してきた。財政投融資から合わせて3兆円の融資を受け、現在、JR東海の長期債務が4兆8千億残っている。名古屋までの建設に5兆5千億が必要であり、大阪までで9兆1千億。長期債務が5兆円を超えると苦しいので、5兆円を超えないようにやっていくと言っているが、もうのこりは2千数百億しかない。当面は3兆円を取り崩して工事を行うと言っているが、工事も若干遅れており、さらに遅れると、新たな財政投融資などがあるのではないかとの見ている人もいる。私たちはそういったことを許さない、そもそもリニア中央新幹線には反対と言うことを明らかにして共に闘っていきたいと思う。

[ 日本科学者会議の中野さんのあいさつ] 科学者会議は、自主的民主的な科学の発展をめざし、科学を戦争のために使ってはならず、国民の生活向上のために使うことを目標にしている。リニアについて科学的に評価して私たちの態度を決めるべきと考えリニアについての研究会を設けて3度のシンポジウムを開催したり、討論した成果をいろいろな機会で発表していきた。先日、トンネル工事による土砂崩落事故を受けて、長野県の中川村、大鹿村、豊丘村、飯田市の現地調査を行った。総勢約20名で2日間かけて、残土置場とか崩落現場を見てきた。現地を見ると、残土問題は非常に大変な問題だとわかる。工事は進んでいるのに、残土置場は決まっていない。住民に利益になるような形の残土置場の提案もされているが、一番の問題は谷を埋めるということ。谷を埋めると大災害の可能性がある。大鹿村では昭和36年に山が崩れ集落がまるごと埋まった災害があった。近辺の山は本当に崩れやすい。車で走っていても崩れているところが何か所も見える。谷を埋めたら地下水の管理をきちんと行わないとダメなのだが、JR東海は一定の期間がすぎると村に管理を戻すと言ってる。村は永久に管理をしなくてはならない。JR東海は全く無責任。リニアの裁判では科学的な評価の部分で側面から検討して協力したい。

[ 山梨の中部横断自動車道の問題に取り組む佐々木さんのあいさつ] 長坂・八千穂間、34㎞の高速道路建設計画に反対している。山梨側は八ヶ岳山麓での建設で、環境破壊についてもリニアと共通課題を抱えている。今後とも皆さんと連帯して取り組みをしていきたい。

[ 天野原告団事務局長 ] 現在国交省から異議申し立ての公述について通知が来ている、何を今さらという感がある。おそらく異議申し立てへの裁決が出ない前に、裁判の判決を下すことはできないと、どこかからせっつかれて、国交省が急にそういう手続きを始めたのではないかと思う。行政不服審査法で認められた権利だから、強制はしませんが、公述していただきたいと思う。先日は工事実施計画(その2)についても500人近い方が審査請求をした。

 大深度地下使用の申請も出された。説明会、意見募集等行われたが、国交省の方から公聴会を6月末と7月初め開くとの通知が来たので、そこでも意見陳述をしたいと思う。

 今回も傍聴席は抽選となりました。

 法廷ではまず、関島弁護士による意見陳述(陳述原稿)、次に和泉弁護士による意見陳述(陳述原稿)がありました。このあと、弁護士、裁判長、国側代理人の間でやり取りがありました。この部分は声が聞き取りにくいことと、言葉づかいが独特なために、???なところがあります。報告集会での横山弁護士の話を参考にしてください。

○横山弁護士:進行について。参加人(JR東海)の準備書面は山梨、静岡、岐阜に関するものだが、残りの一都四県については9月の期日までに出して欲しい。原告側のアセス総論への国側からの反論について反論をするつもりである。
○裁判長:9月の期日に出せるか。
○国側代理人:全部出せるかどうかは分からない。
○裁判長:どこまでなら出せるか。
○国側代理人:3つまで。
○裁判長:それでよろしいか。
○横山弁護士:参加人が山梨、静岡について反論できなかった事情はなにか。
○裁判長:原告適格の問題についてはどうなっているか。
○関島弁護士:車両基地などの範囲が明確化しなければ議論がかみ合わない。あるいは、発生土置き場が決まらなければ、原告適格も明確にはできない。建設対象物が不明確である点についてご理解願いたい。
○国側代理人:(建設対象物の明確化については)アセス各論が終わってからにしてほしい。
○裁判長:認可したのだからその当時のものをそのまま出せば良いのではないか。
○国側代理人:次回に出す。
○裁判長:原告適格については11月までに出せるか。異議申し立てがなかった原告についてはどうなっているのか。
○横山弁護士:国交省は異議申し立て提出時に受領証を出していない。本人の控えの写しを提出する。
・・・
○裁判長:(追加の期日として)2月8日を設定する。・・・

 閉廷後、今回は記者会見はありませんでした。衆議院第一会館内に移動して、報告集会がありました。そこで、関島弁護士と横山弁護士から当日の弁論の内容の解説がありました。報告集会の部分の録音を紹介します。⇒ mp3 [13.7MB] 40分

 報告集会に続いてリニア・シンポジウムがありました。冒頭部分で日本共産党の本村伸子衆議院議員のあいさつがありました。シンポジウムの録音です。 ⇒ mp3 [38.9MB] 1時間55分。シンポジウムの最後に原告団事務局からの報告がありました。

 その中で、川崎市の片平というところに予定されている立坑からの残土の搬出道路の拡幅で2戸の住宅がJR東海から立ち退きを迫られている件の報告が東京神奈川連絡会の矢沢さんからありました。住民の立ち退きはしたくないという意思は固く、東京神奈川連絡会が協力し署名活動で短期間に約1800集め、麻生区選出の自民、公明など全市議の紹介をもらい、川崎市議会に請願を出したそうです。審議は来月あるそうです。

以上 (文責・春日)


ストップ・リニア!訴訟第10回口頭弁論報告集会・シンポジウム資料

2018.6.25 ストップ・リニア!訴訟原告団

p2: 実験線工事計画の経過

1 平成2年6月8日 運輸大臣は「超電導磁気浮上方式鉄道に係る技術開発の円滑な推進について」と題する通達を、財団法人鉄道総合技術研究所、東海旅客鉄道(株)、日本鉄道建設公団の3社に宛て発した。(乙63号)

 この通達は、山梨実験線に国が開発費の一部について補助金を出すことから、「鉄道技術開発費補助交付金要領」において「超電導磁気浮上式鉄道に係る技術開発実施計画書は運輸大臣の承認を受けた技術開発の基本計画に適合するものでなければならない」とされていることから、技術開発の基本計画と山梨実験線の建設計画について大臣の通達で、その内容を指定したものである(乙64)。

2 平成2年6月25日

鉄道総研にいる運輸大臣宛の「超電導浮上式鉄道技術開発基本計画承認申請書」(乙74)
鉄道総研、JR東海、鉄建公団による運輸大臣宛の「山梨実験線建設計画承認申請書」(乙75)

3 平成2年6月25日

運輸大臣の鉄道総研に対する超電導浮上式鉄道技術開発基本計画承認(乙66)
運輸大臣の鉄道総研、R東海、鉄建公団に対する山梨実験線建設計画承認(乙67)

4 整備5新幹線に関する環境影響評価指針(運輸省)(乙71)
昭和59年8月28日閣議アセス決定(乙83)
昭和60年4月26日運輸大臣通達「大規模事業に係る環境影響評価の実施について」

5 平成2年4月26日付JR東海、鉄建公団、鉄道総研の名前で山梨県知事あて山梨実験線での環境影響評価を整備5新幹線に関する環境影響評価指針(運輸省)に基づいて進める旨を照会

6 平成2年7月 JR東海、鉄建公団、鉄道総研の名前で山梨リニア実験線環境影響調査報告書を提出

7 平成2年9月5日山梨県知事環境調査報告書に報告書に従って遵守し環境に十分配慮してほしい旨の回答する(乙77号)

8 平成19年1月22日JR.東海は超電導磁気浮上式鉄道技術開発基本計画の変更申請を国土交通大臣に行う(乙78)
同日 JR東海、整備機構、鉄道総研3社の名で実験線建設計画変更の申請(乙79)

9 平成19年1月23日 国土交通大臣変更申請を承認(乙80.81)

10 平成19年6月 JR東海、整備機構、鉄道総研3社の名山梨実験線環境影響調査報告書経年変化による検証(乙82)


p3:技術開発期間の延長について 第20回超電導リニア実用化技術評価委員会資料(JR東海作成)


元のファイルは国土交通省の「第20回「超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会」の開催結果について」にある「別添資料」の6ページ。


p4-5:上申書

平成28年(行ウ)第211号 工事実施計画認可取消請求事件

告告人 川村晃生ほか 737名
被告 国(処分行政庁 国土交通大臣)
参加人 東海旅客鉄道株式会社

2018年6月19日

東京地方裁判所民事第3部B②係 御中

原告訴訟代理人 弁護士 横山聡 外27名

上申書

1.第10回期日における主張と意見陳述

 第10回期日においては、原告らは準備書面16、17を提出しました。

 準備書面16は、環境影響評価の予測の基本として、環境影響評価に影響する「建造物の特定性」についての批判、山梨実験線での環境影響評価結果を無限定に評価基準としている問題や、発生土置き場を定めずに認可した問題等について反論します。準備書面17では、リニア中央新幹線の山岳部トンネルについて、工事終了後は作業坑を避難口として利用するとしていますが、環境影響評価書に記載された資料からは、正確な斜坑の長さや角度が判明せず、実際に事故が生じた場合に避難可能なのか、その点を踏まえて審査がされたのか、及び被告の主張で安全性を検討した旨の記述と、工事の際に施工者が検討することで検討の必要はないという記述の差異について被告に再度釈明を求めるものです。

 この書面を敷衍して、意見陳述を行いたく上申します。

 意見陳述は、環境影響評価の問題について関島保雄弁護士、安全吐と再度の釈明の問題について和泉貴士弁護士が各10分で合計20分程度行います。意見陳述に際しては、パワーポイントを使用しますので、従前同様プロジェクターをご準備いただくよう要望いたします。

 最後に進行について当職が5分程度意見を申し上げます。

2.主張立証の予定について

 本件は、極めて多分野における専門的知見の立証が必要であり、現在、鋭意専門家証人について順次協力要請を行っております。本件では争点が多方面にわたり、また主張もまだ整理が十分尽くされていないと考えますので、概要が明らかにするのには、もうしばらくお時間をいただきたくお順いいたします。

 今後の期日について

 環境影響評価の問題については参加人が最初に反論するとのことですが、これまで原告らが縷々主張してきたのに対して、原則次々回までに反論することとされましたので、この点については参加人の主張を待ち、これに対して再反論の要否を検討します。裁判所におかれましては参加人が期日を厳守するよう訴訟進行にご配慮いただきたく存じます。次々回の9月14日の期日までに参加人の主張が出そろえば、第12回期日である11月30日にはこちらも必要な範囲で反論できると考えております。

以上


p6-7: リニア工事実施計画(その2)認可取り消し求め審査請求書486通を提出!

以下の文書から、提出後の国交省とのやり取りの記録を省いたもの。(参考ページ)

PDF
2018.5.29審査請求書提出報告.pdf
2018.5.29リニア工事その2審査請求内訳.pdf


p8:JR東海「リニア・鉄道館」の「出張授業」についての申入れ

2018年  月  日

〇●県(市)教育委員会殿

リニアを考える〇〇の会

JR東海「リニア・鉄道館」の「出張授業」についての申入れ

日頃は教育行政にご尽力いただき、ありがとうございます。

 さて、JR東海のホームページに、「リニア・鉄道館」の「出張授業」という<案内>が掲げられ、「じしゃくのふしぎをしらべよう、じしゃくが社会をかえる!超電導リニアのしくみ」というタイトルで、リニアの超電導技術の基礎知識についての授業を無料で行うという広報活動が展開されています。

 私たちはこの広報活動に強い疑念を抱いております。言うまでもなく、JR東海は沿線各地でリニア新幹線の工事に着手しており、同社はリニアを次の時代の交通機関として最も重視し、併せて、同社の命運を左右する極めて重要な技術と考えています。それを学校に出向いて無料で説明する以上、その授業では巧言が弄され、真実が包み隠されることが懸念されてなりません。一つの問題は、おそらくリニア技術の優秀性や利便性ばかりが強調され、負の部分についてはまったく触れられないと考えられることです。

 JR東海の超電導リニアは、技術上の問題点から言えば、エネルギーの過剰な浪費(在来の新幹線の3~4倍以上)や、極めて高い電磁波(日常の生活環境の3千倍程度)の発生による健康への影響、またリニアを安全に運行させるためのメンテナンスの困難性などがありますが、JR東海はそれについては不問に付し、リニア技術の不思議さやすばらしさだけをとりあげて子供たちに説明するものと思われます。その点では教育基本法や学校教育法に示される「教育の目標」の趣旨と相容れないものと言えるでしょう。そして、こうした説明では、子供たちがリニアの技術について、優秀性や利便性という一方に偏った知識だけを教えられることによって、リニアが未来の夢の乗り物として素晴らしいものであるかのように思い込んでしまうおそれがあります。リニアの技術そのものについて学ぶことは何ら非難すべきことではありませんが、その場合、先に指摘した負の側面も併せて教えることが必要で、そのためには第三者的立場から客観的に説明できる研究者などの指導を仰ぐべきだと考えます。

 さらにもう一つ、一層深刻な問題を指摘せざるを得ません。先に述べたとおり、リニア技術によって運行される中央新幹線は、JR東海の将来と命運を担う交通機関です。従ってリニアは、JR東海の今後の経営に関わる最も重要な営利的事業と言って間違いがありません。そうした営利を目的とした事業に関する広報活動が、JR東海にとって都合のよい内容で教育現場に持ち込まれることには、やはり大きな問題があると言わざるを得ません。

 私たちはこの広報活動が一民間企業の営利的活動であると認識しています。教育が私企業の広報活動や営利活動と繋がって良いはずがないことは指摘するまでもありません。これは教育上の、或いは行政上の大きな過失として指弾されねばならないと考えます。

 以上の点において、今般のJR東海の「出張授業」という事案は、公的教育を根底から問い、それを揺るがしかねない重大な問題であり、従って貴委員会におかれては、慎重に熟慮の上対処していただくよう申し入れる次第です。 以上、ご検討をお願いします。

以 上


p9: 「リニアで変わるやまなしの姿」


※ 山梨県が作った「リニアで変わるやまなしの姿」の表紙。リニアができると、生活が革命的に便利になり、産業の観光にも多大な好影響が生じるという一方的な内容。これが県内の学校に11万部配布さました。「リニア・市民ネット山梨」と「山梨リニア沿線住民の会」が県に対して抗議をしています。詳細は ⇒ 冊子に抗議して


p10:シンポジウムの案内チラシ

ストップ・リニア!訴訟第5回シンポジウム


p11:シンポジウム発言者の紹介


左から、宗像さん、樫田さん、井澤さん(写真は、2018/07/03 追加。会場で配布された資料の写真は不鮮明なので差し替えました。)

発言者:樫田秀樹さん 1959年北海道生まれ。岩手大学卒業。アフリカの難民キャンプでの活動後、フリージャーナリストに。国内外の環境問題や社会問題を取材。著書に、『悪魔の超特急 リニア中央新幹線』、『リニア新幹線が不可能な7つの理由』など。

発言者:井澤宏明さん 1967年生まれ。読売新聞記者を経てフリーのジャーナリスト。新聞記者時代は、岩手、北海道で山岳観光道路や大規模林道などの自然破壊に粘り強く取り組む市民から学ぶ。リニア取材は、南アルプス着工前から。岐阜在住。

発言者:宗像充さん 大分出身。登山、環境、家族、人権などをテーマに執筆。2012年から南アルプスとリニア問題に取り組み、2016年に大鹿村に移住。著書に『ニホンオオカミは消えたか?』、『引き離されたぼくと子どもたち ― どうしてだめなの共同親権』ほか。


意見陳述書

平成28年(行ウ)第211号

原告 川村晃生 外
被告 国
参加人 東海旅客鉄道株式会社

準備書面16の意見陳述

2017年6月25日

東京地方裁判所 民事第3部B②係 御中

原告ら訴訟代理人

弁護士 関 島保雄

第1 被告国の準備書面(4)中、施設等の特定出こ関する主張に対する反論

1 被告国及び参加入に対する求釈明

 被告国は、環境影響評価における施設の特定削こ関して、参加人は個別の環境評価項目ごとに、仮定された諸施設の形状等に基づき環境影響評価を実施したと主張していますが、どのように仮定された諸施設を前提に個別の環境評価項目ごとに調査、予測、評価が行われたのか、仮定された諸施設の形状を具体的に明らかにすべきです。

2 参加人の補正後評価書における対象施設の不特定性こついて

 参加人の補正後評価書では、環境影響評価における個別の評価項目において、必要とされる施設の特定性がないために適切な環境影響評価の調査、予測、評価がされていません

 具体例を以下明らかにします。

(1)日照被害についての予測、評価について鉄道施設の特定は不可欠です。

 参加人も地上駅、高架橋、橋梁、保守基地、変電所部分では日照被害が予測されるとしています。

 例えば山梨県の補正後評価書では、山梨県内の高架橋、橋梁部分に関する日照被害の予測も、施設の高さ15m、20m、25m、30m、35m、40mに区分けして日影時間を予測していますが、22力所しかなく、路線の施設に沿った日影図を作っていません。この22力所中18力所で日照時間か限度時間を超えております。地上の施設の周辺では広範囲に日照被害が予測されているのですから、山梨県内の地上部分の鉄道施設の全てを特定して、施設全体の地域住民に及ぼす日影図を作成すべきです。

(2)列車走行による騒音の被害の予測、評価について鉄道施設の特定は不可欠です。

補正後評価書では環境基準を超える騒音被害が予測されています。

例えば、山梨県の補正後評価書の予測値でも、走行騒音予測を14の代表地点中環境基準の75dBを超える77dBから79dBの地域が、山梨県内で6個所あります。防音壁を設置ても14力所中6力所で環境基準を超えているのですから、広範囲な沿線住宅地が環境基準を超えていることが推測できます。まず等音図を作成して被害予測の実態を明らかにすべきで山梨県知事意見書でも指摘されているところです。

(3)車両基地について

 車両基地建設に伴う上木工事により環境は大きく変化を受けるが、施設が明確にされていない為、環境影響が及ぶ範囲が確定していないなど具体比が欠け、補正後評価書は環境影響として不十分です。

ア 神奈川県鳥屋の関東車両基地の例

 補正後評価書では関東車両基地は長さ2.05 km、幅550mの長方形の平面図しか記載かおりません。

 この車両基地を作るための発生上は360万m3こ達しますが、発生した発生土は全て車両基地の建設に使う予定ですので、巨大な盛り土工事が予定されています。

 従って、切上工事及び盛り土をして建設をする車両基地の構造内容が明らかでなければ、車両基地の建設工事によって周辺への環境影響の予測や評価及びこれに対する環境保全措置も明確に出来ないはずです。

イ 岐阜県中津川市の中部車両基地の例

 補正後評価書では岐阜県中津川市の中部総合車両基地は長さ2.2 km、幅550mの長方形の平面図しか記載がなく、構造も規模も全く明らかにしていません。

 この車両基地の建設には約300万m3の建設発生上が使われる予定です。

 どのような規模の車両基地を建設するのかは特定しているはずですが、参加人は中部総合車両基地の位置、構造、規模を明らかにしていません。

第2 発生生置場に関する参加人の第4備書面に対する反論

1 本件認可時時点での発生上置き場

 本件認可処分時に具体的に計画されていた発生生置場は、山梨県早川町塩島地区の1力所、静岡県は大井川源流部の7力所に過ぎませんでした。

 本件認可の工事計画によるトンネル等の建設発生生の全体量は5680万m3であり汚泥を含めると合計6362万m3という巨大な量です。

 しかし、この巨大な発生生の行き場所は本件認可時点では殆ど決まっておらず上記7か所に過ぎず、しかもその発生土処分量を参加任人は殆ど明らかにしていません。

 補正後評価書によると、以下の量だけがある程度参加人から明らかにされているが、それも確定した発生土置場の量ではありません。

 神奈川県鳥屋の車両基地では360万m3の建設発生上が出るが、その全てを車両基地建設のための埋め立て等に使う予定である。

 山梨県では、早川町塩島地区に約4万㎡、高下地区保守基地及び変電施設建設に240万m3、早川芦安道路に160万m3、山梨県駅周辺に45m3と合計449m3の予定を記載していますが、残り269万m3の行き先も決まっていません。

 岐阜県で発生する発生生の内300万m3は中部総合車両基地建設に使う予定であると記載されていますが残り1016万m3の行き先は決まっていません。

 二のように殆ど本件認可時点では発生土の行き先は決まっていなかったのです。

2 認可後の発生上置き場の追加

 本件認可後具体的に計画されることになった発生生置場の問題について

(1) 山梨県内の発生生置場について p

 山梨県早川町の発生土置場は、本件認可時点では、塩島地区1か所の約4万m3 のみ予定されていたが認可後に塩島地区で仮置き場を2か所を追加し3か所になったが追加された仮置き場全体で3.4万m3とのことで、当初の塩島地区4万m3に3.5万m3が加算されたとしても量的にはわずか7.5万m3こ過ぎず山梨県全体の発生生718万m3の大部分がどこにどれだけ行くのかは未定です。

 また、発生生のうち約160万m3を山梨県の事業である早川・芦安連絡道路建設に使用することを意図しているようですが、自然が豊かで急峻な山岳地帯であり発生生置き場による新たな環境破壊が起きる危険性が高いばかりか、そもそもどの程度の量をどこに使用するのかさえも明らかにしていません。

(2) 静岡県の発生生置場について

 本件認可後、参加人は、扇沢を辞めて、大井川源流部の燕沢に約360万m3もの巨大な発生生置場を設置する計画を立てています。静岡県内の建設発生生360万m3の殆どをこの燕沢発生土置き場に置く計画です。この発生上置き場は幅300メートル以上、長さ600メートル以上、高さ65メートルという巨大な盛り土で、将来大井川源流部の崩落や生砂災害の時にダム湖となり大規模災害を起こす危険性が指摘されています。自然環境への影響も大きいが、このような巨大な発生土置場は環境影響評価書では全く議論されていなかったものです。

(3) 長野県の発生土置場について

 参加人の主張によれば、長野県内は大鹿村内に3か所の仮置き場と、大鹿村旧荒川荘跡地への発生土置場及び豊丘村本山の発生土置場決まっているとことです。しかし、これらの仮置き場や発生土置場は本件認可後に決まったもので、環境影響評価さえしていません。旧荒川荘跡地へは約3万m3とのことですが、これは大鹿村で発生する建設発生土302万m3の1%に過ぎません。大鹿村の仮置き場も参加人の計画では3か所合計22万m3で大鹿村全体の発生量の7%に過ぎず、まだほとんどの発生土の行き場や仮置き場が決まっていないのでトンネルエ事が進まない原因となっています。

 大鹿村の旧荒川荘跡地への発生土置場は参加人の計画では面積約4000m2、容量3万m3、最大盛り土は約15mとのことです。

 この場所は小渋川河川岸に近く土砂災害などの危険性の高い場所に設置されることから、盛り土の安全性、盛り土の崩落危険性を踏まえて長野県は環境保全の助言を行っています。本来残土置き場としては相応しくない場所と言えます。

第3 長野県大鹿村でおきたリニア関連工事での土砂崩落事故にみる、南アルプス中央構造線でのリニア新幹除建設工事の危険性

 平成29年12月15日 長野県中川村の、主要地方道松川インター大鹿線道路トンネル新設工事(四徳工区)工事現場付近で土砂が崩落し、平成29年12月29日まで松川インタ一大鹿線は全面通行止めとなり、その後平成30年2月5日に復旧するまで大鹿村民は片側交通の不便を強いられました。

 この事故の原因は、参加人が発注した松川インター大鹿道路四徳渡トンネル新設工事で使った発破等による振動が繰り返されたことによりトンネル直上の地山がゆるみ土砂が崩落し穴もので参加人も認めています。

 この道路が崩落で通行止めになったのですから大鹿本討寸民にとっては大変な生活上の不便を強いられました。

 元々大鹿村は中央構造線の断層で谷の両側の山は脆く崩れやすい。ここにトンネルエ事で発破をすればその振動で山肌が土砂崩れする危険性は前から指摘されていたことである。今回の事故は、その危険性が現実化したもので、今後も大鹿村のリニア新幹線トンネルエ事には同様の崩落事故が発生する危険性は高いことを証明する事故である。

以上


平成28年(行ウ)第211号 工事実施計画認可取消請求事件

原告 川村晃生 外737人
被告 国(処分行政庁 国土交通大臣)
参加人 東海旅客鉄道株式会社

意見陳述

東京地方裁判所民事第3部B②係 御中

原告ら訴訟代理弁護士 和泉貴士

 原告ら代理人弁護士和泉が意見を述べます。

 原告らは原告ら準備書面12・11頁において、山岳トンネルにおける安全性の検証の有無について釈明を求めました。具体的には、参加人の計画によると山岳地帯における非常避難路そのものは、山梨県南巨摩郡の3900mを始め静岡県では3500m、その他2000mから3000m台のものもある(訴状33頁)。これ らについて、事故時の避難経路など安全性の具体的検討がなされたか明らかにすることを求めました。

 二れに対し、被告国は、乙50号証、平成21年7月28日付けの「超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価」において具体的検討がなされている、また、平成22年4月15日に開催された交通政策審議会の第2回小委員会において、技術的な問題の検討事項について、技術評価委員会の結論を覆すほどの根拠は現時点では存在しないことが確認されていると回答しました。

 しかし、「超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価」が作成されたのは平成21年7月28日、交通政策審議会の第2回小委員会が開催されたのは平成22年4月15日ですから、この時点では中央新幹線の具体的ルートは決定されていません。

 また、「超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価」では、被告も引用するとおり、超電導磁気浮上式鉄道におけるトンネル区間の避難に関し、「トンネルの坑口、立坑口、斜坑口および作業トンネルへの出入口等を通って、外部に避難する。」と記載されているのみです。平成20年12月中央リニア調査有識者委員会におけるとりまとめの概要でも、「エ、 万一トンネルの途中で停止した場合の避難方法」として、「・新幹線と同様に、車両に具備した梯子により車両から中央通路へ降りる。・中央通路からは階段を降り、シールドトンネル下部の避難通路へ避難する。・その後、最寄の駅及び立坑へ移動し、地上へ避難する。」と記載されているのみです。これらの記載からは、山岳トンネルにおける事故の際には、「車両から梯子を使って通路に降り、避難通路から斜坑を経由して地上に出る」という検討がなされたということしか読み取ることができず、まったくもって具体的な検討がなされていません。

 また、避難所要距離、避難所要時間が極めて長くなるごとに対する検討がなされていません。地下空間において避難が必要となる災害の原因として想定しうるものは、テロ、何らかの理由による火災、地震、停電など多岐にわたります。乗客の生命安全を確保するためには、可能な限り短時間で避難及び負傷者の病院への搬送を行われねばなりません。例えば、昭和54年に発生した上越新幹線大清水トンネル工事火災事故では14名もの作業員の命が央われましたが、原因は避難経路が群馬川で5.3km、新潟側で15kmと長かったことが挙げられています。リニア中央新幹線の山岳トンネルについても、車両から非常口入口までの距離が最大2.5km、非常口入口から地上出口までの距離が直線距離で最長3.9kmとなり、地上に脱出するまでにかなりの長距離を移動せねばなりません。さらに、地上に到達したとしてもそこは市街地から離れた山岳地帯であり、多数の負傷者を救急車に乗せて搬送する場合さらに相当の時間を要することとなります。例えば、静岡県の大井川源流地域の非常口から負傷者を救急車で搬送する場合、重症の負傷者は静岡市の二次救急施設に搬送せざるをえず、107㎞もの距離を5時間以上かけて移動することが必要となります。それにもかかわらず、避難所要距離や時間、負傷者の搬送時間について具体的検討がなされた形跡がありません。

 その他、2~3名の乗務員が1000名もの乗客を誘導することによって生じる混乱、避難時に超電導磁石の近くを通過することによる身体への影響なども検討された形跡がありませんし、さらに留意しなければならないのは、テロや乗客による殺傷事件に対する対応が検討されていない点です。平成27年6月には、東海道新幹線車内で男が焼身自殺を図り、火災が発生しました。また、平成30年6月9日には、同じく東海道新幹線の車内で乗客3人が刃物で殺傷される事件が発生したことは記憶に新しいでしょう。テロや乗客による殺傷行為の場合、被害の拡大を防ぐためには危険物の持ち込み禁止、手荷物検査などが必要となりますが、1000人もの乗客を乗せて10分程度の運行間隔で発車する中央新幹線について手荷物検査を行うことはきわめて困難です。これについても具体的検討がなされた形跡はありません。

 以上を踏まえて、原告ら準備書面17では再度の釈明を求めています。

 詳細は書面に記載しておりますが、吝非常口入口から地上までの避難所要距離、移動手段、避難所要時間、地上への移動中に一時避難場所は設置されるのか、非常口から負傷者を医療施設まで搬送するための具体的ルート、救助隊の待機場所および各非常口までの到達予想時間等を明らかにすることを求めます。

以上