飯田リニア通信 更新:2023/12/01

「『リニア新幹線問題』県民シンポジウム」

 11月15日に「明るい県政をつくる県民の会」主催の「『リニア新幹線問題』県民シンポジウム」がありました。主会場は長野で飯田会場をリモートで結んで行われました。県内の工事の状況について報告するよう「飯田リニアを考える会」に要請があり、報告させていただきました。

 この会ではほかに、主催者事務局から長野県内のリニア計画の概要の説明、「静岡県民ネット」からの報告、「共産党県議団」からの報告がありました。

 以下、「飯田リニアを考える会」の報告内容とスライドです。

 以下は、説明に使ったスライドと簡単な説明です。


大鹿村の南アルプストンネル長野工区の非常口は3カ所

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大鹿村の中心部に近い、小渋川非常口。右のこげ茶色の建物のあるところが非常口の工事ヤード。その左の赤い屋根は県企業局の大鹿発電所。その左に残土が積んである場所はJR東海の電力変換所予定地で現在は残土の仮置き場。要対策土5000㎥も仮置きされている。左端のほうに要対策土の活用法について実験する施設。

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6㎞ほど奥に入った釜沢地区の除山非常口

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と釜沢非常口

南アルプストンネルの長野工区はおよそ図のような感じ
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工区の長さは8.4㎞でこれは本線部分の長さ。斜坑や先進坑の掘削済みは赤。列車の走る本坑の掘削済みは緑で示しました。画面左小渋川橋梁に近い部分は長さ約360m程度。品川方面の掘削が停滞した時期に名古屋方面へ掘削したはず。しかし、どの程度掘ったのかはわかりませんが最大でも360mです。本坑の長さに比べて、だいたい17%~19%程度掘ったことになります。長野工区の掘削開始は2017年の7~11月にかけてでした。6年掘ってま、2027年までの4年で残り8割を掘れるかどうかという見方が一つ。除山非常口からの掘削が長野工区で最長の長さ約7㎞。まだ斜坑と先進坑なんですが、これまで6年で約3㎞掘っています。残りの約4㎞を、JR東海は2026年11月までに掘削完了したいといっています。そのためには、毎月コンスタントに90~100mを掘削しないと間に合いません。11月11日の『読売オンライン』の記事の中でJR東海は、トンネル工事は「順調に進んでも1か月に約100メートル掘るのが精いっぱい」といっています。そんなハイペースを3年間維持できるのか。これまでの除山非常口からの掘削の平均のペースは約40m、最近の先進坑のペースで約55m。少なくとも6年はかかるという予想もできます。JR東海が当初いっていた10年ではとても掘れない。

もう1カ所、大鹿村には伊那山地トンネルの青木川非常口があります
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本坑を掘っていましたが、中央構造線の手前で直径の小さな調査用トンネルを掘削中。

南アルプストンネルと伊那山地トンネルは小渋川橋梁でつなぐ予定
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写真で見るように両側の山が迫った険しい谷で鳶ヶ巣峡と呼ばれる場所。現状では現場にいたる道路がないし、道路ができるかどうかも疑問の場所。

2014年の事業説明会でJR東海が示した構想図
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この説明会で住民から、どうやって工事をするのかと質問がでました。JR東海は、トンネルの坑口を足掛かりに工事をしようかと考えていると説明。南アルプストンネル側は数百m掘れば開くんですが、伊那山地トンネルは坑口までまだ約3㎞を残していますから、橋梁工事がはじまるのは、早くて約3年後、評価書では橋梁工事は7年とされるので完成は10年後よりあとの話でしょう。

小渋川非常口の対岸、鳶ヶ巣崩壊地は高低差約550mの大崩壊地、その直下の小渋川の川岸に残土を盛土処分する計画があります
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村が発案したといわれますが、「環境対策事業」と呼んでいます。この場所を視察した専門家は、「こんな場所に残土を置くんですか」といったそうです。また、盛土の安定性について検討しOKをしたんですが、「最悪の事態を考えてやってほしい」と述べました。なら、OKしなければよいはずです。

除山非常口ヤードの排水口。
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撮影したのは連休中で工事はお休みなのでほとんどはトンネル湧水のはず。

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釜沢非常口ヤードの排水口。撮影は同じ日。どちらも以前より増えている感じがします。

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JR東海の環境についての年次報告でも増えていることは明らかです。(2023/12/01 追記:同じ年次報告で、大鹿村内の伊那山地トンネルの青木川非常口について、「トンネル湧水等」は2021年度に比べると約1500㎥程度増えていることがわかります(グラフ)。また周辺の2つ井戸の水位が低下したと報告されています。)

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豊丘村の伊那山地トンネルの坂島非常口。これまで4回の労災事故がありました。

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伊那山地トンネルの戸中非常口。画面右に延びているベルトコンベアで残土を捨てる隣の谷へ運んでいます。

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戸中非常口そばの下沢(くだっさわ)の残土処分地。

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戸中非常口そばの下沢(くだっさわ)の残土処分地。

リニアの残土置場で県内最大規模の豊丘村の本山。
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残土処分地問題で揺れる岐阜県御嵩町の住民が視察と交流会のため来たときの写真です。

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これは一番上のほう。

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残土は下から積むとの説明だったのですが、林道から見ると上から積んでいるように見えます。谷の一番したまで行くための工事用道路をつくるためなのだろうと思いますが、この状態で下のほうで作業が粉われるので工事中の災害も心配です。

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残土の活用先の公共事業のひとつ。豊丘村の福島てっぺん公園の駐車場の造成工事。実はこれも谷埋め盛土で、下流には人家や棚田があります。

豊丘村神稲のJR東海の電力変換所の予定地
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もとは農地。斜面なので平坦部を造成するのに切土工だけでなく、トンネル残土7万㎥を使うとJR東海はこれまで説明していきました。また、自社用地に要対策土を使うとも説明してきましたが、最近出た環境保全計画では、残土の量、要対策土を使うのか使わないのか具体的に触れておらず、県の環境影響評価技術委員会が明確にすべきだと指摘しています。直下や周囲には農地があって、農作業のための道路通行や汚染について心配の声があります。

中部電力「リニア変電所」image
木にかくれて本体は見えないのですが、左のほうに中部電力がリニアのために造る下伊那変電所があり、鉄塔がみえます。一番高いのは超高圧線から新設変電所に分岐するための鉄塔。他の鉄塔の約倍の高さ。遠方には大鹿にリニアの電力を送る送電鉄塔も見えます。福島のてっぺん公園から。

喬木村阿島の高架部分の橋脚の工事
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喬木村阿島の高架部の橋脚、天竜川橋梁の橋脚。画面右上に風越山トンネルの坑口の予定地がみえ、県内地上区間のほとんどが写っています。

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天竜川の右岸からみた、天竜川橋梁の工事現場や喬木村の高架部の工事。

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喬木村堰下のリニアのガイドウェイ製作保管ヤード。半分だけ造成して約2年前からガイドウェイの部品が野積みされた状態です。

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高森町下市田のガイドウェイ製作保管ヤード。こちらは、8月から操業をはじめています。

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矢印の銀色のシートで包まれたものが鉄道ではレールにあたる自立式側壁パネルで長さは約12.6m、重さは10トン弱位かと思います。

中間駅のできる飯田市上郷の北条地区です。
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解体撤去された住居の基礎だけが残っています。まだ移転してない家もあります。

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ブルーシートに覆われてるのは中央アルプストンネルの残土です。駅周辺整備などに用いますが、飯田市の住民感情を無視した軽率な説明で、せっかく立ち退いた土地を残土捨て場にするのかとの声がでました。残土の後ろの青い囲いは建設中のマンション。このマンションの手前はぎりぎり駅周周辺整備地域。もとは整備範囲に立っていた、このすぐそばにあったマンションの建て替えです。

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完成したマンション。本来、強制力はないですが、マンションのある区画は重点協議区域とされ、土地利用について地域で協議してから行うという申し合わせがあった場所ですが、構想がまとまらないまま、このマンションとは別にのマンションが数年前建設が、飯田市によっていわば許可されたことで、方針が崩れてしまいました。

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中間駅のすぐ西は風越山トンネル。その坑口の予定地。青い囲い。奥は農業用水の水路の変更の工事。手前のは新戸川の流路変更工事。中央の家が移転しないとシールドマシンの発進する場所ができません。移転先の工事はこれからです。電車の見えるのが飯田線で飯田線の下約7mをリニアが通過します。

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クレーンのいる場所は、駅の東の端で土曽川を超える高架の橋脚の工事。もとは3階建てのアパートがあり、昨年解体工事中に作業員が屋根から転落してなくなっています。

飯田市座光寺の天竜川と同じ高さの下段。飯田市が約30年前に分譲した住宅団地。
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25戸のうち20戸が移転対象になりました。これは2014年のようす。遠方のオレンジ色の屋根は営林署でこちらも更地になっています。

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飯田付近では、リニアのルートは、JR東海が2011年に公表した位置から移動しています。2011年の好評の時、JR東海は飯田市が希望していた飯田線飯田駅への併設は無理だと説明していました。

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駅の位置で約1.6㎞、ルートは約1㎞移動しました。この移動が地元の希望によるものなら、住民の意見を聞いてから行うべきでしたが、そういうことは一切なく、この当たりの事情が、住民のあいだに、割り切れない感情を残しているのはあきらかです。つまり、地元のことなのに移転する人たちに事前に相談がなかったじゃないかということです。

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風越山トンネルの上部は市街地です。このビルの真下をトンネルが通ります。シールド工法が可能かどうかの調査のためのボーリングが行われましたが、ルートの真上で行ったわけでないのに、巨石のあるなし、巨石の硬さなど分かるのでしょうか?

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こういう住宅地もあります。これは6月に静岡県民ネットの方たちと視察した時の写真。都市部では、大深度法の認可を受けて、地権者に無断で掘るということができるんですが、長野県内は大深度法が適用できないのに、地権者の権利を無視しており、都会と田舎では人権に差があるといった感じです。

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風越山トンネルの黒田工区はNATM工法で、8月30日から掘削が始まっています。

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中央アルプストンネルの松川工区工事ヤード。本坑位置から掘削の予定が想定以上に岸壁がもろいという理由で工事方法を変更してヤード内から斜坑を掘りました。ここでも労災が起きています。

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中央アルプストンネルの萩の平非常口はまだ工事ヤードの造成中。

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南木曽の広瀬非常口。

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南木曽の尾越非常口。10月20日ころ掘削を開始。

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尾越非常口そばの残土処分予定地。旧長石工場の建物がまだ残っています。アスベストを含むスレートが材料の建物。解体工事は慎重にやらないと大変です。敷地には古い盛土造成もあり、20万㎥置けるとの見込みは半分ほどになる可能性もあるとのはなしもあり、残土の行き場が不十分なままではどんどん掘削するわけにはいかないでしょう。(2023/12/01 追記:11月にJR東海が公表した「南木曽町内発生土置き場(尾越)及び南木曽町内発生土仮置き場(尾越)における環境保全について」によれば、面積1万4千㎡に9万㎥置く計画になっている。)


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