飯田リニア通信 更新:2021/03/15

ストップ・リニア!訴訟ニュース 第22号

 ストップ・リニア!訴訟ニュース 第22号が発行されました。掲載が遅くなり申し訳ありません。

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ストップ・リニア!訴訟ニュース 第22号

発行:リニア中央新幹線沿線住民ネットワーク

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不当中間判決に抗して!最後まで闘おう!

次回裁判期日は5月11日(火)午後3時~東京地裁103号法廷

中間判決を不服とする控訴手続き終了

 昨年12 月1 日、ストップ・リニア!訴訟の中間判決で東京地裁は原告782 名の三分の二に当たる532 名の原告適格を否定する不当判決を下しました。

 原告団事務局は原告適格を外された中から東京高裁に中間判決の取り消しを求める(上訴)を行うための、原告の募集を行い、169 名が訴訟原告になる意思表示され訴訟委任状を弁護団あてに送付しました。

 そして、1月28日に訴訟弁護団は「訴訟理由書」と「原告名簿」を東京高裁に提出し手続きを終えました。

【各地の原告数】
東京:15 名 東京・神奈川:14 名 相模原:38 名
山梨:25 名 静岡:4 名 長野:8 名
岐阜:19 名 愛知:46 名

控訴理由書「総論・はじめに」

第1総論 1はじめに

⑴訴訟の意義を顧みない原判決の不当性

 2020(令和2)年12月1日に言い渡された中間判決(控訴人の一部に原告適格を認めた判決)及び却下判決(原告適格を否定した原判決)は、本件訴訟の原告781名中249名の原告適格を認めたが、532名の原告適格を否定し訴えを却下した点で誤った判決である。

 却下判決は、輸送の安全性を求める権利、南アルプスを中心とする自然環境を享受し保護する権利、景観の保護や道路交通の円滑な交通と安全を求める権利、建設発生土運搬車両の運行による平穏な生活の侵害を防止する権利、土地等の所有者の物権的権利に基づき本件認可処分の取消しを求める控訴人らの原告適格を全て否定した。

 中央新幹線の工事計画認可取消しを求めて控訴人らを含む第一審原告らが本件訴訟を提起したのは、中央新幹線沿線に居住する者の平穏な生活やその所有する不動産等の権利が中央新幹線計画やその工事の為に奪われるというだけではなく、そもそも、中央新幹線が安全な輸送が確保されていない危険性の高い乗り物であることを訴え、南アルプスのど真ん中に長大なトンネルを掘る工事計画は貴重な自然が残され国立公園やユネスコのエコパークに指定されている南アルプスの自然環境を破壊する危険性が高いとして、その貴重な自然を護りたい、その自然を現状のまま享受したいという権利に基づくものである。

 このような訴訟提起の経緯からして、輸送の安全性を求める権利及び南アルプスの自然を享受し護る権利を公益的利益であり控訴人ら各人の個別的利益ではないとして原告適格を否定した原判決は、控訴人らだけでなく原告適格が認められた第一審原告らの中心的な権利を否定したもので看過できない問題である。

 却下判決は、中央新幹線工事計画の中心的で全体的な問題点を見ようとしなかったのである。

⑵必要性の欠如した中央新幹線計画

 今や中央新幹線計画はその必要性も無く、輸送の安全性を欠き、南アルプスの貴重な自然を壊してまでも作る必要性が無いことが国民をして明らかになってきた。

 特に昨年以来、新型コロナ感染の拡大及びテレワークの促進によって、東海道新幹線の利用客は激減し、東海道新幹線の収入に大部分を依存する参加人は大幅な赤字となり、財政的にも中央新幹線施工に関し、東京・名古屋間で5兆4300億円、東京・大阪間で9兆300億円もの建設費用をかけても採算が合わず、多額な借財に耐えられない状況に追い込まれつつある。テレワークの拡大で今後の東海道新幹線の利用及び将来仮に中央新幹線が完成したとしても東海道新幹線と中央新幹線の両方を加算した利用客は増えず、参加人の財政悪化は回復しない。それに加えて、大井川源流部における中央新幹線トンネル工事により大井川の水量が毎秒2トン減水すると参加人は評価書において認めているが、静岡県は、その減衰する全量を大井川に戻さない限り静岡県内の工事の着工を認めない立場を堅持していることから、現在も静岡県内の工事には着工できていない状況である。また静岡県内だけでなく東京・名古屋間の沿線での建設発生土 置場が決まらないため、トンネル掘削工事を進めることができず、参加人は2027年に東京・名古屋間の工事を完成するとした本件工事計画を履行できないことを認めざるを得ない状況に追い込まれている。工事の完成が遅れる間に、ますます財政的負担に耐えられなくなるばかりか、そもそも現在の東海道新幹線の外に中央新幹線が必要ではない等の国民的な世論が高まることは明らかである。

 さらに中央新幹線と同じ大深度地下にトンネルを掘る東京都内の外郭環状道路工事の調布市の現場において再三にわたり地盤陥没事故が発生し、工事現場付近の住民が不 安に陥っている。本件中央新幹線工事計画も、東京都、神奈川県、愛知県では同事故と同様に大深度地下でのシールドマシンの掘削が予定されており、同様の地盤陥没事故が想定されている。

 このように本件中央新幹線計画が破綻に向かって進んでいる状況の中で、輸送の安全性をないがしろにし、世界的にも全国民的にも貴重な価値を有し、これを将来世代に残すべき南アルプスの自然環境を破壊する本件工事計画の違法性を問う本件訴訟において、原告適格という訴訟の入り口で、これら輸送の安全性と南アルプスの自然の保護を訴える控訴人の原告適格を否定し た原判決は速やかに取消されるべきである。

 (以下、項目のみ )

2 原告適格を判断するには判断材料が不十分であり誤った判決であること

⑴不当な訴訟指揮

⑵2500分の1の地図の提供が無いこと

⑶事故対応が具体的に明らかにされていないこと

⑷工作物等施設の形状規模等が具体的でなく明らかとなっていないこと

⑸大井川源流部及び南アルプスの水環境等自然環境の保全対策も不十分で明らかとなっていないこと

⑹建設発生土置場及び運搬車両の運行ルート交通量等が判明していないこと

3 全幹法適用の違法について

4 控訴人らの原告適格について .

以下の各論は省略します。

全体で65頁に及びます。

2月8日、東京地裁にて進行協議開催

 2011年2月8日午前東京地裁で、ストップ・リニア!訴訟の弁論再開などについて進行協議が行われ、次回期日が5月11日(火)午後3時から1時間にわたって開かれることが決まりました。当日は原告側代理人と原告による更新弁論が行われます。

 原告側弁護団は裁判長に3点の要請を行いました。

①6人の証人申請の受け入れ

②被告側からの非常口周辺など2500分の1の地図提出

③裁判官による山梨実験線の現地視察

 この日の進行協議には原告側から弁護団共同代表の関島氏、事務局長の横山氏、事務局次長の和泉氏、それに半田氏の弁護士4人が出席、川村原告団長、天野事務局長、橋本事務局次長が傍聴参加しました。被告側からは国交省、JR東海(参加人)の代理人や傍聴者が参加しました。

 冒頭、市原義孝裁判長が「本日の進行協議は原告側の要請で開くもので、原告側の傍証参加を希望しているが了承しますか」との発言があり、被告側が同意しました。

 原告側はまず、これまで3人の証人申請をしてきたが、今日3人の証人申請を行うとして文書で追加申請をしました。合わせて6人の申請人のうち5人はリニアが抱える問題について専門知識のある研究者などで、残り一人はリニア推進を進めてきたJR東海の葛西敬之名誉会長です。

 裁判長は次の期日前に準備書面を提出するかを質問し、協議の結果共に4月12日までに準備書面を提出することになりました。

 このあと原告側は、「工事発生土の搬送ルートについて、5万分の1の地図では被害の騒音・振動などの予測や被害が立証できない。すでに沿線では発生土の搬送が始まっている」と主張し、被告側に2500分の1の地図を提出するよう求めました。

 JR東海の代理人は最初「必要とは思わないが、要請があれば検討したい」と答えましたが、国側と打ち合わせをした結果「出すとなれば資料が膨大であり準備できない。アセスの評価書に基づいて出したものであり、要請には答えられない」と拒否しました。

 裁判長は、次回の期日について日程を提案し、5月11日午後3時から原告側の更新弁論を行うことで、原告・被告側も同意しました。裁判長は、「傍聴者も多いことなので、当日は103号法廷で行う」と通知しました。最後に原告側から裁判長に対し、すでに走行試験が行われ沿線で被害が起きているリニア山梨実験線をぜひとも視察してもらいたいと強く要望して、この日の進行協議は終わりました。

東京地裁・高裁でストップ・リニアをめざして奮闘しよう

訴訟原告団からのお願い

 昨年12月1日の中間判決では、およそ3分の2の原告の適格が却下されました。現段階で裁判所が争点を少なくする目的で一方的に原告適格を判断するのは不当きわまりないことです。

 ストップ・リニア!訴訟事務局では東京高裁に上訴(控訴)する方針であり、判決前に原告の皆様に原告適格を却下された場合のご意向をアンケートの形でお聞きしました。その際、控訴にはそれなりの手数料(印紙代)がかかるため、控訴原告数をある程度限定することに、「控訴原告になる」、「控訴原告にはなりたいが、費用のことも考え、事務局に判断を任せる」、「控訴 原告にならずサポーターとして支援する」、「控訴原告にもサポーターにもならない」という4つの以降のどれかを選択してほしいと求めました。その結果100人を超える方から「控訴原告になる」との回答をいただき、最終的に169人の原告で控訴することになったものです。

 ストップ・リニア!訴訟は2016年5月20日の提訴から間もなく6年を迎えます。リニア新幹線沿線ネットワークは沿線の皆さんとその2年前から裁判を起こそうと決め、訴訟事務局を作り、弁護団との合宿や現地施設などを繰り返しました。そして、「中央新幹線工事実施計画( その1)」の認可取り消しを求め738人近い人たちが原告となって提訴しました。その後、2019年3月13日に、「中央新幹線工事実施計画(その2)」の認可取り消しを求めて67人が第二次提訴を行いました。6年近い裁判でおよそ20回の口頭弁論が開かれましたが、原告の皆さまとサポーターの方々のご協力があり、毎回100近い大きな法廷の傍聴席を満員にすることができました。

 東京地裁での裁判の維持はリニア問題の深刻さを世論に訴えた成果があると思いますが、大井川水系の地下水保全対策の欠陥を理由とした静岡県や県民の奮闘、新型コロナウイルス拡大による鉄道産業への深刻な打撃、そして昨年秋以降の東京外郭環状大深度道路工事による被害発生が続き、「もうリニアはいらない」との声が高まっいます。

 ストップ・リニア!訴訟の目的はリニア工事をやめさせ、根本からリニア事業を見直せというものであり、被告の国は明らかに追い詰められています。

原告を外れた皆様からの財政支援をお願いします

 原告団事務局のお願いもあり、やむなく控訴原告から外れた皆様に改めて今後も引き続きの財

政支援をお願いします。

 原告団は、原審で5人の研究者、専門家を証人として申請しました。また、東京地裁と東京高裁

での裁判が並行して行われることになり、裁判費用の支出が増えることが見込まれています。

 訴訟の財政の健全な維持のためには、これまで通りに収入が基本となります。今回、控訴原告に入れず、また入れなかった皆様には、今年度はこれまで通りの会費の納入をお願いしておりますが、来年以降も継続して同様の財政支 援を心からお願いする次第です。

(川村晃生原告団長、天野捷一原告団事務局長)

ストップ・リニア!訴訟 5年度決算

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静岡県内リニア工事差し止め訴訟

「静岡県内リニア工事差し止め訴訟の会」のブログより林克さんの投稿記事を転載させていただきます。

「大井川の水源守りたい」

 訴訟の準備を始めたのは一昨年の暮れ、本格的には2020 年に入って議論した。守るべき住民の権利は大井川の水の権利と、南アルプスの自然を享有する権利。私は両方とも尊い権利だと思うが、とにかく裁判の勝ち筋は前者と議論する中で考えた。

 静岡県ではリニアの認可の前から、県民ネットと市民ネットの2 つの運動体があってそれぞれ運動してきた。それが訴訟に関してはいっしょにやるのは画期的なことだ。だから私たち県民ネットは議論を大事にして大井川流域の住民のみなさんが立ち上がることが大事と、そこに焦点を当てて運動を組み立てた。

 まず島田市と掛川市で市長さんと懇談し、運動団体としての認知をしてもらおうと4 月に島田の染谷市長と、ぎりぎりコロナの非常事態宣言が発せられる前に懇談した。掛川の松井市長と懇談できたのは、宣言が明けた5 月末。

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 コロナのおかげで2 ヶ月遅れたが、大急ぎで島田市と掛川市の集会を準備し、7 月には行ってそれぞれ80 人、90 人の参加で、予想以上の大入り満員の状況だった。特に掛川・小笠はその場で会をつくっていくという方向で運動がスタートしたと思う。環境問題の静岡市は9 月のはじめ、100 名の参加で成功した。

 この手順が、107 人の原告のうち、大井川の水を水源とする8 市2 町の住民は67 人と過半数、うち大井川の水を利用する農業者は12 人という結果につながっていると思う。