飯田リニア通信 更新: 2020/12/28

ストップ・リニア!訴訟ニュース第21号

 ストップ・リニア!訴訟ニュース第21号が発行されました。郵送の方には27日発送しましたので、年内には届くと思います。

 本日、メール添付で発送しましたが、何通か戻って来たものがありました。原因としては、添付のPDFファイルのサイズが過大(13.5MB)だったことがあります。そこで、29日午後以降にファイルサイズサイズを縮小したものを再送信します。送信後に気付いたことで、確認不足だったことをお詫びします。


HTML版

ストップ・リニア!訴訟ニュース

第21号 2020年12月25日
発行:リニア新幹線沿線住民ネットワーク http://linearstop.wix.com/mysite

image

7割の原告適格を認めない不当判決!!
南アルプスの自然保護、リニアの安全性を排除し、
争点を個人的利益に狭める

 12月1日午前11時、東京地裁でストップ・リニア!訴訟の原告適格こ関する中間判決が言い渡されました。古田孝夫裁判長が3月に示す予定だつた判決を、後任の市原義孝裁判長が代読。

 その内容は第一次・第二次原告782名のうち実に7割に及ぶ532名の原告適格を認めない不当判決でした。

 傍聴席の抽選に外れて、東京地裁前で待機していた関係者は一様に怒りをあらわにしていました。

 「詳細は午後の集会で報告されます」との事務局の声に促され、衆議院第一議員会館に向かいました。

東京地裁前集会

 12月1日10時から東京地裁での集会で原告団事務局メンバーから当日の日程が報告され、10時半からの傍聴券をもらうために蜜を避けて印のところに並びました。

 45人の傍聴席に対し、90人が抽選に並びました。

弁護団・原告団が記者会見

 川村晃生弁護団長は「個別的利益がなければ裁判ができないことになる。原告適格を改めて問い直したい」と怒りを隠しませんでした。

 弁護団・原告団は判決後、司法記者クラブで会見を行い、冒頭、横山聡弁護団事務局長が、「自然環境への深刻な影響を軽視した環境影響評価をうのみにし、乗客の安全性を重視しない公共交通機関の管理者と姿勢を容認した判決であり、今後も工事認可処分の取り消しを求め闘いぬく」という声明を読み上げました。

 関島保雄弁護団共同代表が判決の内容について、「全原告に共通な適格である乗車した場合安全な運行を確保できる権利と南アルプスの美しい自然景観を享受する利益、ルート上ないし近辺に物質的権利(土地、借地、借家、立ち木トラスト等)を所有するものの権利の二つを原告適格と認めなかつた。鉄道施設等の立地が明らかでなく、残土ルートや運び先が詳細でないのに、認可時点では具体的影響を訴求できないとした国やJR東海の逃げ得を許す判決だ。何のためにこの時期に原告を切り捨てて、争点を外すことをやっていいのか到底理解できない」と述べ強く抗議しました。

報告集会でも怒りの声

 12月1日中間判決の後、衆議院第一議員会館で裁判の報告集会が開かれ75人が参加しました。

 初めに関島弁護士が中間判決の内容と大幅な原告適格の削減の狙いについて、「リニア新幹線の問題点や南アルプスの自然破壊という本質的な問題から目をそらし、ルートや鉄道関連施設周辺の問題に争点を絞ろうとしている」と述べ判決を批判しました。横山弁護士は「今回の判決で全員の適格を却下するということも含め裁判所の対応をなかなか読めなかった。土地の所有権など物質的権利を原告適格に認めない判決だが、いつまでたつても権利を主張できなくなる。またどこにどうリニアを通すかはJR東海の判断であり、それが明らかにされない段階で原告を切り捨てるのか。ルートが決まらないのは原告の責任だと言つているのと同じだ」と述べました。

 今後の訴訟方針について横山弁護士は、2週間以内に原告を外された者が全員で東京高裁に控訴する。そのあと皆さんと相談の上、上訴の期間や高額な手続料を考慮して原告数を減らしたうえ、来年1月末にも正式な上訴手続きを取ることを提案しました。

 原告団事務局の天野捷一事務局長は、「個人的利益の問題に矮小化している判決であり、今後の日本社会の在り方を考えて闘つている原告や多くの人たちを裏切るものだ」と述べ、今後早期に沿線各地で弁護士による中間判決報告会を開くことを要請しました。

 なお、集会に参加された福嶋みずほ社民党党首と共産党の本村伸子議員から、参加者に対し連帯の挨拶がありました。

ストップ・リニア!訴訟の中間判決を受けて 原告団長川村晃生

 ストップ・リニア!訴訟は、多くの市民がリニア新幹線は未来世代に残してはいけない交通機関であるという認識を共有し、その建設を中止させるために起こされた訴訟です。南アルプスにトンネルを掘るという取返しのつかない自然破壊やエネルギーの浪費と言えるような過剰な消費などをはじめとした、多くの理由によつてこの裁判は起こされました。

 しかしながらこの度の中間判決は、そうしたリニア議論は不要であり、ストップ・リニア訴訟においては個別利益すなわち住民被害のみを対象とするという裁判官の意志を、原告適格の形を借りて示したものです。ここには、常に国寄りの姿勢を示す現在の司法のあり方が、はっきりと映し出されていると云つてよく、私たちに司法は頼るべき制度ではないことを明示していると言えるように思われます。

 当然私たちは、原告不適格をめぐって控訴し、その不当性を訴えていく予定ですが、一方で訴訟は運動論の一つの形であるという原点に戻つて、新たな運動の展開をはからねばならないとも考えます。

 訴訟にしても運動にしても、その根底には、私たちがいかに世論を動かせるかというテーマが横たわっています。その意味では、この度の中間判決は私たちに運動のありかたをもう一度考えさせる機会でもあると言えるでしょう。

 今後も、各地の訴訟とも連携し、また運動のつながりを強めつつ、リニア新幹線建設の中止に追い込むまで闘い続けるつもりです。

静岡工事差止訴訟、東京大深度地 下訴訟、外環道陥没・空洞報告

報告集会の最後に、

①静岡県民107人が大井川水系の水保全と南アルプスの自然保護を求めて10月30日に提訴した静岡県リニアエ事差止訴訟について原告団事務局長の芳賀直哉さんが、②東京のリニア大深度地下工事差止を求めて提訴を準備中の住民を代表して奈須りえさんが報告しました。

 またリニアエ事にも影響必至の東京外環道道路陥没と空洞発見について外環ネットの籠谷清さんがスライドを交えて報告しました。

image

12月11日、東京高等裁判所に控訴状を提出

控訴状

東京高等裁判所御中

2020年12月11日

控訴人ら訴訟代理人
弁護士 高木輝雄
弁護士 関島保雄
弁護士 中島嘉尚
弁護士 和泉貴士
外21名

上記当事者間の東京地方裁判所平成28年(行ウ)第211号工事実施計画認可取消請求事件(甲事件)、平成31年(行ウ)第115号工事実施計画認可取消請求事件(乙事件)について、同裁判所が令和2年12月1日に言い渡した判決に不服があるから、控訴人は控訴を提起する。

第1 主文

1

原判決の表示

別紙甲原告目録記載の原告らの甲事件の訴え及び別紙乙事件原告目録記載の原告らの乙事件の訴えをいずれも却下する。

訴訟費用は、甲事件につき別紙甲事件原告目録記載の原告らの負担とし、乙事件につき別紙乙事件原告目録記載の原告らの負担とする。

第2控訴の趣旨

1原判決を取り消す。

2本件を東京地方裁判所に差し戻す。

3訴訟費用は被控訴人、被控訴人参加人の負担とする。

との判決を求める。

第3控訴の理由

控訴の理由は迫つて準備書面で提出する。

ずさんなアセスの徹底追及を

 リニア訴訟はリニア新幹線の工事認可は全幹法と環境影響評価法に違反するとして2016年5月20日に715人が提訴し、その後2018年3月13日に67人が第二次提訴しました。

 提訴の主題はリニア新幹線が全幹法の基本である全国新幹線網の形成につながらず、これまでにない超電導磁気浮上方式によつて時速500キロで走行することによる危険性やトンネル内の事故による避難対策の不備であり利用客の安全を損なうこと、また南アルプスをはじめ沿線地域の自然環境への影響により、自然を享受する国民の権利を奪うということでした。

 また、地震によるトンネルの被害や、地下水の流出や枯渇が起き住民の生活に被害が及ずさんなアセスの徹底追及をぶことも予想されることを原告らは主張してきました。残土処理についても環境影響評価中は具体的な運搬ルートや処理場所も明らかにされず、車両基地や発電所など鉄道関連施設の立地場所も曖昧のままでした。

 被告の国も具体的な計画をあいまいにしたまま、原告全員に適格はないと言い張り続けてきました。

 工事の開始後アセスメント予測に反する被害が起きており、今後も起こることが確実となっています。

 中間判決は、被告側に立つて原告の原則的な主張を退けるものであり、私たちは今後、工事認可の取り消しをもとめて活動を強めていきましょう。

image