飯田リニア通信 更新:

静岡県民ネットワークが国交省とJR東海に抗議

 静岡県内でリニアの建設工事が着工できない状況について、(1)国交省が専門家を含む新たな検討組織を設置する方針を示したことについて、また、(2)JR東海が静岡工区を短縮し、長野工区と山梨工区を延長する工区の変更の可能性を示したことについて、「リニア新幹線を考える静岡県民ネットワーク」が抗議声明を出しましたので紹介します。(原文=PDF)

 国交省鉄道局の江口審議官の「県の設けた有識者会議はある意味で当事者だ。科学的・工学的に検討する第三者的な専門家会議を国交省に設置する」という発言について、「静岡県と環境保全連絡会議委員に対する侮辱」と指摘しています。


2020年1月23日

国土交通大臣赤羽一嘉殿

リニア新幹線を考える静岡県民ネットワーク

共同代表 林弘文、林克、酒井政男

〒422-8062静岡市駿河区稲川2-2-1セキスイビル7F(電話)054-287-1293(FAX)054-286-7973

リニア中央新幹線トンネル掘削による大井川の減水問題について静岡県に対する国土交通省鉄道局の対応に抗議する声明

 私たちの会は、ここ数年間リニア中央新幹線の建設問題で静岡県の環境影響評価委委員会や中央新幹線環境保全連絡会議でのJR東海担当者の説明・釈明と県側委員からの質問・意見を継続して傍聴してきました。この知見を踏まえ、今回の国土交通省鉄道局の対応に対しては以下の理由で抗議します。

1.  1月17日、国交省鉄道局の江口審議官は難波副知事に対し、「静岡県・国交省・JR東海の三者協議に環境省や農水省も加えるべき」との静岡県の要請を拒否し、省内に独自の有識者会議を設置すると回答した。

 このことは、JR東海「環境影響評価書」に対して、南アルプストンネル工事は「多くの水系を横切ることから地下水がトンネル湧水として発生し、地下水位の低下、河川流量の減少または枯渇を招き、ひいては河川の生態系に不可逆的な影響を与える可能性が高い」「工事実施には地元の理解と協力を得ることが不可欠であり、住民関与についても十全を期す」と述べた環境大臣意見が議論に反映されないだけでなく、「事業実施に当たっては、地元自治体の意見を十分勘案し、環境影響評価において重要である住民への説明や意見の聴取等の関与の機会の確保についても十全を期すこと」との国交大臣意見を自ら反故にする暴挙といわざるをえない。

2. 同審議官はまた、「県の設けた有識者会議はある意味で当事者だ。科学的・工学的に検討する第三者的な専門家会議を国交省に設置する」とも述べている。

 これは、静岡県と環境保全連絡会議委員に対する侮辱である。国交省は昨年来、同検討会議に鉄道局職員を陪席させ、「科学的知見に基づく議論がなされている」と評価してきたにもかかわらず、今回の発言はまるで“県の専門家会議の議論は科学的・工学的知見を欠いているから、国が仕切る会議で検証する”と言っているようなものである。明らかに、先の見解と矛盾し、自らの立場の自己否定というべきである。

 また「県有識者会議は当事者云々」もおかしな言い分である。国交省そのものが工事を認可した当事者であることからすれば、同省提案の「有識者会議」が第三者的議論を担保できるか大いに疑わしいからである。

3. 同審議官は議論の焦点を、①トンネル湧水の全量の大井川表流水への戻し方、②トンネルによる大井川中下流域の地下水への影響の2点に集約しているが、それは導水路放流口より上流側等での生態系保全を全く無視するものである。

 県民は、2013年の環境評価準備書において大井川の流量が毎秒2トン減ることが明らかになって以来、知事が一貫して、「湧水を全量戻す」ことを主張し、そのスタンスを変えていないことを高く評価している。

 これまでの静岡県の議論を無視して、南アルプスの自然環境・生態系を破壊し、ユネスコエコパークの登録抹消にもつながる暴挙は許されない。私たちは、静岡県がその立場を引き続き堅持することを強く求めるものである。

以上


2020年1月23日

東海旅客鉄道株式会社

社長金子慎殿

リニア新幹線を考える静岡県民ネットワーク

共同代表 林弘文、林克、酒井政男

〒422-8062静岡市駿河区稲川2-2-1セキスイビル7F(電話)054-287-1293(FAX)054-286-7973

リニア中央新幹線静岡工区変更の可能性言及に対しての抗議

 私たちの会は、ここ数年間リニア中央新幹線の建設問題で静岡県の環境影響評価委委員会や中央新幹線環境保全連絡会議での.. JR東海担当者の説明・釈明と県側委員からの質問・意見を継続して傍聴してきました。

 静岡新聞.. 2020年.. 1月.. 20日朝刊に、「貴社担当者が工事の進捗状況によっては工区変更の可能性は考えられる」との記事が掲載されました。私たちは下記の理由から「工区変更の可能性に言及したこと」に抗議します。

 静岡県知事と県民は、静岡県内のリニア中央新幹線南アルプストンネル掘削工事によって大井川の水量が減少することだけでなく、工事中に他県に多量の水が流出することに大きな懸念を抱いています。貴社、静岡県、国土交通省による三者協議が進められているにもかかわらず、「進捗状況によっては」の前提はあるものの一方的に工区変更の可能性に言及したことは不誠実であると言わざるを得ません。

 あまつさえ、特に畑薙山断層破砕帯の掘削による大量出水を大井川水系に戻す方法について結論が出ていない現状で、静岡工区を短縮し山梨工区・長野工区を延長する変更は県外への流出量がさらに増加することになり、断じて容認できません。また、工区変更は工事発生土量の増減が伴いますが、山梨・長野両県民の了解は得られるのでしょうか。

 そもそも、工区変更じたい工事認可を受けた計画案に違背することであり、環境影響評価をやり直すべき重大な計画変更にあたります。

 むしろ、三者協議に真摯に対応していただき、県外流出を極力回避する方法を提示することが県民理解を得る最良の態度であると考えます。

以上