飯田リニア通信 更新:2020/01/22

全国集会『南アルプスにリニアはいらない』 報告

 1月19日に開催された全国集会『南アルプスにリニアはいらない』の報告が原告団本部より届きましたので掲載します。 ⇒ PDF


「南アルプストンネルは自然を破壊する、JR東海に環境保全対策なく、杜撰な環境アセスは 破たん」と専門家指摘

~リニア沿線ネット主催で南アルプス全国集会(シンポ)開催~

 1月19日午後、神奈川県川崎市の麻生市民館で、リニア新幹線沿線住民ネットワークとストップ・リニア!訴訟原告団主催による全国集会『南アルプスにリニアはいらない』が開かれました。

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 現在、リニア新幹線工事は、都市圏の非常口や山間部の非常口の一部で着工されていますが、出水等、残土処理場の未定などで大幅に遅れています。とくに南アルプストンネルの建設工事は大井川水系への地下水流入が毎秒2トン(流域県民62万人分 の水道水に匹敵)減水することで静岡県や水利関係者を中心に抜本的な復水対策を求める要望にJR東海が解決策を示しておらず、県内のリニア関係工事はストップしています。大井川水系の復水対策が無いまま工事が行われた場合、南アルプスの自然や住民生活に深刻な影響を及ぼします。今回の集会シンポは 南アルプスの貴重な自然についての理解を深め、自然破壊をもたらすリニア工事の中止を求めるために企画されたものです。集会には川崎、町田、相模原、東京の他、山梨、静岡、長野、愛知 大阪などからリニア沿線地域を中心に215人が参加し、ゲストの塩坂邦雄氏、五十嵐敬喜氏、辻村千尋氏の発言に熱心に聞き入りました。

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 初めにリニア新幹線沿線住民ネットの共同代表でリニア訴訟原告団長の川村晃生氏が主催者として開会あいさつを行いました。そして、川村氏の進行で三人による発言を柱にシンポジウムが行われました。ゲストと川村氏の発言内容の趣旨は次の通りです。

エコパーク登録は世界遺産と同等の意味、被害予想について実証的調査が必要

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五十嵐敬義氏(法政大学名誉教授、弁護士)

 「南アルプスは2014年にユネスコエコパークに登録されたが、本来は世界遺産の登録を求めたものであり、世界遺産と同様の価値がある。リニア工事によってどのような影響があるのか予想はできるが、実際に地層や地質、生態系について実態はどうなのか具体的に調査をし、予想を裏付ける実証をする必要がある。リニアによる開発行為が進めば登録から10年というユネスコの検証により完全な保護ができないとなれば登録が取り消される可能性もある。環境アセスのずさんさは問題であるが 、 環境保護や国立公園に関する法律にリニア工事が 抵触しないかを確認する必要がある。

 リニア工事はユネスコエコパークに反するものであり、工事認可は取り消すべきである」。

始めから決まっていた南アルプスルート、後追いだった環境影響評価は影響を回避

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~辻村千尋氏(元日本自然協会保護室長)

 「リニア新幹線は最初に3ルートが示されたが、それぞれのルートについて 調査が行われず、南アルプスルートを決めてから絶滅危惧種などの生態系の調査が行われた。また、開発地域も国立公園を避けるルートを選び、大井川源流部のトンネル工事現場一帯は大手製紙会社の社有地であり、開発を禁止できない。また、工事の開発許可の権限を持つのは国交省であり、環境省は意見を述べるだけの存在でしかない。南ア許可の権限を持つのは国交省であり、環境省は意見を述べるだけの存在でしかない。南アプスのトンネルは山頂からプスのトンネルは山頂から地下地下1400mに掘られる。十分な調査は出来ない。南アルプス1400mに掘られる。十分な調査は出来ない。南アルプスの地層は平均で年4mm隆起・沈降してい隆起・沈降しているという大きな値である。

 環境大臣意見でも『これまで最大の工事であり、環境保全対策をしてもなお影響が残る』として、工事について慎重な調査と対応が必要であると求めている。環境影響評価の環境保全対策は不完全な調査を基につくられたもので、環境影響を回避できるものではない」。

JR東海による大井川水系の復水対策無し。地下貯水ダムなどの対策を考えるべき

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~塩坂邦雄氏(地質学者、静岡県中央新幹線環境保全連絡会議委員

 「南アルプストンネルの静岡県内工事を行なえば、地下水は山梨県側、長野県側に220万m3 流れることになる。 大井川上流などの沢水が涸れれば生態系にも大きな影響が出る。トンネル内に流れ出る地下水の全量を大井川に戻すには、導水路トンネルや地表につくる給水ポンプでは不可能であり、JR東海には復水対策が無いと言っていい。私見だか地下に貯水ダムを建設することが対策と考えている。地層、地質、地下水の調査についてJR東海は手抜きだらけで、ボーリング調査を1カ所行っただけで『 地下水対策 』 を立てている。 また、南アルプスの地層は複雑に重なり輻輳しており、地下1400mにトンネルを掘ることは危険である。活断層を横切ることになっており、地震で断層が動けば、リニアの運行に被害を与える。計画に賛成派の研究者を巻 き込み工事実施を押し通そうとしているが、根本的な対策をJR東海が 真剣に考えているとは思えない」。

新たな手法を使って南アルプスの環境問題の追求を~川村晃生氏(進行)

 「三人の発言で、南アルプスの自然保護について、エコパーク登録を維持すること、自然遺産を守るべき理由について、新たな手法が得られたと思う。世界的に貴重な存在だということを明らかに示すことによっ てリニアの環境アセスのずさんさを具体的に明らかにしていきたい」

輸送の安全性、南アルプスの自然保護を訴える原告を適格除外することは許されない

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~関島保雄氏( 訴 ~ストップ・リニア!訴 訟弁護団 共同代表)

 休憩をはさんで、ストップ・リニア!訴訟弁護団共同代表 の関島保雄弁護士から 、3月30日の第18 回口頭弁論で東京地裁の古田孝夫裁判長が原告適格について中間判決を出すことについて、 経緯と今後の方針の報告がありました。

 関島氏は、「どの程度の原告を適格除外するか明らかでないか、争点を減らす目的で原告を減らそうとしていることは明らかだ 。 南アルプスの自然保護やリニアの 輸送の 安全性を訴えている原告以外に、立ち木トラスト、土地トラストの参加者も除外されるとなると、訴訟に与える影響は大きい。判決が出た場合は高裁への上訴をする方針であるが、 原告団と対応策を詰めて行く。皆さんのご支援を引き続きお願いする」と述べました。

 集会は、休憩後、リニア新幹線を考える東京・神奈川連絡会、同相模原連絡会から町田、川崎、相模原のリニア工事の実態や台風19号による 工事関連道路被害の報告がありました。

 相模原連絡会の河村妙子さんは神奈川県駅(橋本、鳥屋車両基地、大洞非常口(藤野)などの工事の現状について次のように報告しました。「神奈川新駅については説明会で住民から大規模工事の影響不安や工事車両の走行による安全確保について疑問の声が多く出た。また、昨年秋の台風19号の豪雨により、リニア 工事 車両が使う道路が各所で被害が出ている 。また、大洞非常口の残土処理場になる採石場に大きな亀裂が出ているほか、横浜市の取水処理場も近くにあり、横浜市水道局が監視体制をとることになっている」。東京・神奈川連絡会の矢沢美也 さんは、川崎市、町田市につくられる予定の7つのリニア非常口現場を報告、「川崎市麻生区の東百合ヶ丘非常口と梶ヶ谷非常口では工事が進められており、JR東海は大深度トンネル掘削に早く入りたいようだ。片平非常口では工事用道路のルート変更を言いだし、住民 の移転をJR東海が執拗に迫っている 」と 述べました。

 最後に、リニアを問う愛知市民ネットの小林収さんが閉会宣言を行い、「辻村さんの力を借りて若者の力を集め、南アルプスのリニア問題を広く訴える活動が今後必要だ」と呼びかけました。

(了)