日本弁護士連合会リニアシンポジウム

更新:2019/11/06

 ストップ・リニア!訴訟の事務局長の天野さんが日弁連が11月2日に行ったリニアシンポジウムの報告を送ってくれましたので紹介します。 ⇒ PDF版


2019/11/05

『JR東海は調査もしていないし、資料もないまま工事を進めている』~

日本弁護士連合会のリニアシンポジウムで、地質・地下水専門家が指摘

 2014年にリニア計画の再検討を求める意見書を提出した日本弁護士連合会が、11月2日、『シンポジウム リニア新幹線工事の現状と課題』を開き、弁護士や市民ら70名が参加した。

 はじめに、日弁連公害対策・環境保全委員会から、大鹿村の残土処分地を調査した報告があった。それによると、 「 日本一美しい村の一つ大鹿村では至る所にリニア工事残土が積み置かれ、 仮置き場ではなく、JR東海は最終処分場にしようとしている。また 大崩 れ があった場所の真下にも残土を置こうとしている。残土置き場により貴重な景観が壊されて い て、観光面に影響が出ている 。 計画では最大時毎日1700台余りの工事車両を走らせる が、現在も騒音や排気ガスで村民の生活が脅かされている」状況であった。

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シンポジウム「リニア新幹線工事の現状と課題課題」11月2日 日本弁護士会館

 この後、塩坂邦雄氏(静岡県中央新幹線環境保全連絡会議委員)、桂川雅信氏(日本科学者会議長野支部幹事)、川村晃生氏(リニア訴訟原告団長、慶應義塾大学名誉教授)が順次、 基調講演を行った。

 最初の基調講演者の塩坂氏は、「南アルプスの生態系と地下水保全」について、現状を報告。

工事中に最少でも250万m3の地下水が流出する

 「リニアは南アルプスで、糸魚川静岡構造線、中央構造線を通過する。この地域では毎年平均で4ミリの地盤隆起があり、地層が プレートの相互作用で複雑に湾曲している。JR東海はボーリング調査をきちんとやらずに工事を進めようとしている。地下水もやたらに戻しても生物の被害に繋がる。 水質の アルカリ性が強く、温度も河川水と冬場で15度も違うからだ。燕沢の残土置き場は以前土石流があったところで、調査もデータも知らずに 残土置き場 計画を進めるのは危険だ」。

 次に桂川氏が以下のテーマで基調講演を行っ た。

谷間に残土を埋めるのがなぜ危険か~土木工学の成果を無視するJR東海

 「JR東海の環境影響評価に対する国の意見書は残土の処分地について何の規制も加えておらず、JR東海のやり たい放題になっている。JR東海は自治体の要請や住民の質問に対し て 、 適切に対応しますとだけ答え、具体的な方策を示していない。JR東海や県は 残土 処分地の管理責任を負わない。谷埋め盛土は土砂の滑動被害が予想され。盛土の角度が小さいほど滑動は起こりやすい。大鹿村の残土置き場に余裕がなくなったため、工事がストップしている。 平成26年に超党派議員の提案で決まった水循環基本法は河川法も超える法律であり、その趣旨を生かすことが大事である」。

 最後に川村氏が「リニア問題と市民運動 」をテーマに基調講演をし た。

諦めない運動とリニア訴訟提起の意義~私たちが情報の発信源になる

 「2007年の リニア計画の発表以来、山梨で起きたリニア見直しの運動は沿線全体に広まり、2013年5月には横断連絡組織としてリニア新幹線沿線住民ネットワークが誕生した。その後全体としてリニア工事中止を求める著名人の共同声明、署名、リニア工事認可に対する異議申し立てを行ってきた。申立人は5千人を超える 異例の数になった。工事を止める手段として2016年5月に東京地裁に700名を超える原告がストップ・リニア訴訟を提起した。裁判は国やJR東海に情報提供を迫る場であり、国民にリニア問題の本質を知ってもらう場として考えている。山梨ではリニアの問題点を訴えるビデオを定期的に作成し、Youtubeで放映している 。リニア橋梁部の景観破壊は眺めだけでなく、住民生活の 共同体としての歴史的な暮らし を喪失させるものだ 」。