ストップ・リニア!訴訟ニュース第17号

更新:2019/08/14

 ストップ・リニア!訴訟ニュース第17号が発行されました。HTML版を掲載します。オリジナルはPDF版です。


ストップ・リニア!訴訟ニュース

第17号2019年8月1日発行リニア新幹線沿線住民ネットワーク
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7月19日(金)第15回口頭弁論開かれる

リニア新幹線訴訟公正な審理を求める署名29,057筆提出しました
ロ頭弁論に先立って午後12時30分に東京地裁内の民事3部書記局に提出しました
13時15分から事前集会が開かれ、意見陳述される関島弁護士の表明が行われました
14時から傍聴券を求めて110人近い人が並び、今回で15回連続の抽選になりました


署名簿を抱えて地裁前に立つ沿線各地の代表

原告らの原告適格に関する意見陳述原告代理人関島保雄弁護士

 被告は、輸送の安全性に関する利益は、一般公益に属する利益であり、原告らの個別的利益として保護する趣旨を読み取ることは出来ないので、原告適格が無いと主張しています。

1. 即ち、全幹法は、国民経済の発展、国民生活領域の拡大及び地域の振興といった利益の実現を趣旨・目的とする法律であり、これらの利益は、専ら不特定多数の一般的利益に属する利益と見るほかないこと、工事計画の認可の段階で詳細な工事計画や図面等を作成する必要も無いこと、建設線の周辺住民や「開業された後リニアモーターカーに乗車する可能性が高く、輸送の安全性を求める」とする者を手続きに関与させる規定が存在しないことなどを根拠に原告らが主張する利益を個別的利益として保護する趣旨を読み取ることは出来ないと主張しています。

2. また、鉄道事業法や環境影響評価法は、「目的を共通する関係法令」とは言えないと主張、「乗客になる可能性が高くその場合の輸送の安全性を求める法律上の利益」といった公益に属する利益を、個々人の個別的利益として保護するものとは解しがたいと主張しています。

これに対する原告の主張は

第1原告ら全員は、輸送の安全を求める法律上の個別的利益があり、原告適格を有しています。

①鉄道事業法の輸送の安全性確保の規定の上に、全幹法の規定がある以上、全幹法も鉄道事業法に従って、乗客の安全確保を第一に優先すべきです。

 新幹線は、時速200km以上が要件であり、中央新幹線は現行の新幹線の倍以上の時速505kmという高速運行を行い、しかも路線の86%が地下トンネル構造であることから、工事計画の認可に当たっては、乗客の安全は、鉄道事業法対象の一般鉄道や現行の新幹線以上に、慎重に確保されなければなりません。

②中央新幹線を供用するにあたり、その安全性の欠如により中央新幹線を利用する可能性のある者の生命身体を侵害することが含まれていることは、輸送の安全性を図るという鉄道事業法1条に定める目的に照らして明らかです。

③乗客の生命身体に関わる輸送の安全性は、国民個々の利益や権利として、原告適格が認められるべきです。

 中央新幹線計画は、磁気浮上式という世界でも初めての技術での走行であり、技術の安全性も確立していない中で、万一事故になった場合は、多くの乗客の生命、身体の重大な危害を与える危険性があることは明らかです。日本全国に居住する国民個々の保護すべき利益として中央新幹線の安全性の確保が求められており、個々人の個別的利益として原告適格を有しているのです。

第2 原告ら全員に、南アルプスの豊かな自然環境を保護し享受する個別的利益があります。原告ら全員に原告適格があります。


大鹿村から赤石岳を展望

 環境影響評価法は鉄道事業法及び全幹法の「目的を共通する関連法規」であります。

 南アルプスの自然環境が維持されることについて、国民は、個々の幸福追求や経済活動の基盤として重要な法律的利益を有するというべきです。

 南アルプスの貴重な自然環境を保護し又は自ら自然を享受する利益は、国民個々人の利益でもあります。

 司法が原告適格を拡大し、環境利益や生物多様性の保全にかかわる環境訴訟を国民個々が提起する道を開くべきです。

第3 本件認可処分により工事計画予定地に土地等不動産の物権的権利を有している原告は、本件認可処分により可能となった工事が進行することで、将来必然的に権利が侵害されるおそれのある者である以上、原告適格が認められるべきです。

 被告は、物権的権利者は、本件工事計画認可後の、土地収用等の手続き段階で権利の主張をすることが出来るから本件認可段階では原告適格は無いなどと主張しています。しかし、本件事業地の不動産に所有権等の物権的権利を有する者は、土地収用法の事業認定に対する取消請求をすることは可能ですが、土地収用法の事業認定取消請求をする迄、工事計画の認可処分の取消を訴えることが出来ないとする正当な理由は存在しません。

 土地収用法の手続きでは、土地収用の事業認定処分が出て初めて事業認定の取消を求める訴訟を提起することが出来るというのでは、事業計画の違法性を主張する時期としては遅すぎます。

 土地所有者等物権的権利者に、工事計画の認可段階で、その違法な認可の取り消しを求める原告適格を認めなければならないのです。

第4 本件工事計画の認可処分による工事及び中央新幹線の運行に伴い、工事予定地等事業地の周辺住民の騒音、振動、大気汚染等様々な環境の被害により健康又は生活環境等人格的利益に著しい被害を受けるおそれのある者の原告適格について①列車走行による、被害は、騒音・振動等により健康又は生活環境に係る著しい被害に関しては、軌道中心線より両側半径800mの範囲を騒音振動の及ぶ範囲に居住する原告らに著しい被害を直接受ける者に該当するという主張をしています。

 新幹線の環境基準は、環境基準75dB以上の騒音地域に居住する住民に対する国の違法行為による賠償責任が認められています。騒音・振動等により健康又は生活環境に係る著しい被害を生じる危険性のある者として原告適格を有しているのです。

②工事関係の建設機械や車両等による騒音・振動、低周波、大気汚染の被害に関しても環境影響評価の予測範囲の工事対象施設から200m以内の原告の原告適格として主張しています。

③残土運搬車両による被害に関しては、運搬ルートがほとんど不明であるため、現時点では運搬ルートの可能性のあるこれら原告の原告適格を認めるべきです。

④トンネル工事により地盤沈下の被害が予想される原告は、その危険性が予想される範囲であるトンネル中心線から100mに限定しています。

⑤日照被害の原告も、高架橋敷地境界から110mの範囲の原告にその被害が予想されると原告適格を主張しています。

⑥自然環境の保全に関しては、特に残土捨て場が殆ど決まっていない現状の下では、その対象の可能性が広範囲に及んでいる以上、広範囲な原告に原告適格を認めるべきであります。

⑦本件工事による取水源に対する汚染が予想される以上、その水道の対象である広範囲の原告に原告適格を認めるべきです。以上(意見陳述の概要)

東京都町田市、神奈川県相模原市の被告準備書面(15)対する反論を中心に

大深度地下法に基づく工事の問題点を指摘原告代理人横山聡弁護士

(1)原告は被告・参加人の行った環境影響評価は不適切で内容がなく、これを看過ごして本件認可を与えた違法を問題にしています。

 事業を行なうにあたり、新たな建築物の建造や掘削など改変を行えば、環境に負荷を与えることは不可避です。その負荷の程度・回避・低減方法と、効果等について明らかにして、方法の適切・正確性を確認できなければ環境影響評価としての意味をなしません。環境影響評価書には認可時点では日照被害、騒音被害、車両基地の高さや形状など明示されていません。このような問題をはらんでいる環境影響評価書の欠陥を見抜けなかった被告は、現時点でも「見過ごせない瑕疵」として、認可を一度取り消して、改めて事業認可について検討すべきです。適正な配慮の判断基準等について直接定めた法令の規定は見当たらないという、国の怠慢を肯定する考え方は適切とはいえません。

(2)「大気質及び交通混雑度、安全について」

被告は参加人実施の環境影響評価を無批判に受け入れ真剣な審査、吟味を怠っています。これは法令が不適切なのです。再度、評価を求めるべきと判断すれば必要な調査を求めることは可能で実行しなければ許可を出さないという権限が被告にあります。

 事業サイトに忖度する「事なかれ主義」が本件のような形式のみ整えた環境影響評価の温床となっています。

(3)「騒音・振動等について」東京では参加人の「現況の騒音レベルが基準を超過しているから寄与はほとんどない」との判断を肯定し、相模原でも「規制上限に近い予測値のところもあり、居住地である以上、住民生活への配慮が必要」とするとしていますがどのように配慮するか何ら示されていません。東京では「車両の点検整備による性能維持」等を、相模原では「低騒音型建設機械の採用」等を確実に実施するとの評価で認可しています。これが具体的な調査・予測・評価と云えるのでしょうか。

 既に悪化した環境を復元する具体的提案や回避策を示すべきですが、参加人が環境に配慮していないため、地域住民は環境破壊を危惧しています。

 特に、発生土置き場について、工事認可時に定まっておらず運搬車両の騒音・振動は適切に評価されていません。事後調査では、不適切な場所を発生土置き場としても「既に適法に認可を受けた」と対応する場合、住民は保護されません。このような不適切・不十分な環境影響評価による認可は重大な瑕疵を帯びており、取り消されるべきです。

(4)「水関連(水質・水位等)について」生物の生態系・環境に大きな影響を有する水は、生命・生活関係に必要不可欠で、東京においては、工事が着手されたのち、影響が発生しています。

 参加人は、東京都の2019(令和元)年6月の事後報告書で、小野路町の井戸所有者から「井戸が枯れた」と意見が寄せられたことを報告しています。これに対し参加人は「地下水への影響がほとんどない工法を採用しており、工事ヤード付近の観測井戸においても地下水位に変動がないことを説明」と対応しました。原告らの調査によると共同学舎敷地内の設置された井戸の水枯れに関するもので1分間に2トンもの湧水量を誇る井戸について掘削工事中に水枯れが生じたと連絡しましたが、参加人は特段の調査をせずに、工事との因果関係を否定しました。しかし、地下の水系は複雑であり、至近の観測井戸で変動がなくとも距離の離れた場所において影響は生じます。これを調査もせずに切り捨てる対応は到底適切とはいえません。


リニア駅で消える相原高校のクスノキ

(5)「大深度地下工事について」東京外環道工事において、シールドマシンによる大深度地下掘削工事では、酸欠空気が存在する地層を掘削したために、閉じ込められていた酸欠空気が地層の中の移動しやすい空間を伝って野川に噴出しました。この事態は一般の市民生活においても酸欠空気に接触する危険があることを示しています。酸欠空気の通り道が建物地下である場合には多大な被害が生じます。地下水脈について

も参加人は「シールド工法だから地上に影響はない」というだけで、根拠を示していません。参加人が、少なくとも現状で判明している地層等に基づき、シールド工事を実施した場合の地下の空気状況や水系の変化などを視覚化すれば,環境への影響について住民の理解を得られるでしょう。同じ内容を繰り返すだけで、厚さだけが際立つ環境影響評価書を作成するよりもはるかに意味があると考えます。

 大深度地下の掘削工事は、これまで使用されてこなかった地下にトンネルを掘削するため、緊密であった地層に振動を与え緊密さを緩和します。緩和の影響はトンネル直上部に限定されないで一定周辺部にも及びます。そうなると地盤の安定度が減少し、一定以上の重量のある建物を建設することに適さなくなり不動産の価値も減少します。気付かない間に大深度地下にトンネルが建設されて、安全性・財産権を密かに奪われ

る可能性があります。

 参加人は東京・神奈川・愛知で大深度地下の利用に関して、路線上の地権者・住民に直接、大深度地下工事のトンネルの直上であることを通知していません。リニア中央新幹線の効率的運行のために個人が居住の安全や財産権の侵害を受けなければならないという理由はありません。適正な手続による正当な補償を行うべきです。参加人の「告知すら行わない」という対応は不適切極まりません。参加人の手続的適正を欠いた対応や都市部における大深度地下工事の安全性に疑義が生じる点について、建設技術に精通しているはずの国土交通省が看過していることは、本件手続きに更なる不適切性が明らかになったと言えます。本件建設工事自体が環境影響評価制度で求められている手続保障を順守せず、手続的適正の違反に鑑み、被告が適宜適切に参加人に指導監督を行い、適正な手続が回復されるまで、工事の中止を指示することが求められます。以上(意見陳述の概要)

ストップ・リニア!訴訟第10回リニアシンポジウム

「命の水、大井川減水対策不備、リニア工事は無理である」


リニア新幹線静岡県民ネットワーク共同代表の林克さん、南アルプスとリニアを考える市民ネットワーク共同代表の松谷清さん、リニア・市民ネット山梨代表で原告団長の川村晃生さんの3人によるパネルディスカッションが行われました。林さんは、静岡県はトンネル工事で出た湧き水はすべて戻してほしいと主張を続けている。JR東海は全量戻すと云うが県はどのように全量戻すのか等のやり取りが続き2019年6月に静岡県から中間意見書が出されてJR東海は2019年7月に回答した。静岡県はゼロ回答との評価をしています。本当に毎秒2トンなのか?命の水が出なくなってしまうのでは。JR東海は苦し紛れに「毎秒3トン減水したら工事を中止する」減水した分をポンプアップと導水路トンネルで大井川に戻す計画を出している。椹島の導水路より上の沢が枯れるのは明らかでJR東海は希少な動植物は移植して保護すればよいというが、南アルプスに生息する希少動植物は多くの動植物の中にあって生きている。切り離して移植したら保護できるという事にはならないと県は主張しています。県はJR東海に新たな復水対策を求めています。

 松谷さんは、静岡市は大井川の減水問題で周辺の自治体から早く対応してほしいといわれている立場を忘れて県道トンネルでJR東海と30年6月に合意した。議会で「南アルプスの自然環境の保全、ユネスコエコパークとの整合が絶対の条件」との決議が出ているのに静岡市長の減水問題での対応は市民の立場に立っていないと批判しました。早川町のリニア工事の排水の汚れについて、塩坂邦雄さん(地質専門家)と一緒に調べたら外の排水の透視度が10.5だった。排水元では濃いのを流していることになります。排水元のところでは毎日、大成建設が調査して情報を持っている。静岡市も請求すると答弁している。リニアトンネル工事ではコンクリートを吹き付ける時にアルカリ性の強い排水が出るので硫酸で中和して川に流します。静岡市もリニア工事排水には関心を持たざるを得ない。川村さんは、静岡県を支える活動が必要だと述べるとともに、リニア問題を広げ活動する上で南アルプスの自然保護を前面に出すことが重要であると強調しました。

次回の口頭弁論予定
10月11日(金)14時30分
12月20日(金)14時30分