谷埋め盛土に関する第三者委員会への要望書、10月3日

更新:2018/10/04

谷埋め盛土に関する第三者委員会への要望書

 中川村の半の沢と大鹿村のアカナギ下(鳶ガ巣沢)にリニアのトンネル工事の残土を処分することをめぐって、長野県と大鹿村は、安全性について専門家による第三者による技術検討委員会を発足させました。これについて、10月3日、飯田リニアを考える会も加盟する伊那谷・残土問題連絡協議会は、検討委員会の議論に住民の意見も反映させるべきとして、長野県飯田建設事務所に要望書を手渡しました。検討委員会による現地視察を両方の場所を一緒にしたのは便宜上のことで、半の沢は県の事業であり、鳶ガ巣沢については大鹿村の事業なので、大鹿村への要望については、大鹿村に直接提出して欲しいとの説明が建設事務所からありました。

 要望書は以下のとおり。


2018(平成30)年10月3日

飯田建設事務所 所長

 坂 田 浩 一 様

 伊那谷・残土問題連絡協議会

     共同代表:岡庭一雄

          :桂川雅信

連絡先:南信州地域問題研究所

mail : nan-tik@dis.janis.or.jp

    電話:0265-52-5391

谷埋め盛土に関する第三者委員会への意見陳述に関する要望書

 初秋の候、貴職にはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

 さて、JR東海によるリニア中央新幹線工事は、長野工区でのトンネルエ事に着手して1年以上が経過しておりますが、いまもってトンネル掘削による発生残止処分地はほとんど決定しておりません。

 これはJR東海が当初から残土処分地の選定を近隣の谷埋め盛土にこだわっているため、下流域の住民から強い不安や反発の声が上がっていることからくるものです。

 もともと現在の谷埋め盛土の候補地としてあげられているところは、わが国の災害史にも残る三六災害によって未曽有の被害を被った地域です。三六災害から半世紀以上経った今日でも、その傷跡は深く人々の胸に刻まれており、他地域から来た企業が土足で踏み荒らすようなことは決して許されることではないのです。しかも、近年の異常豪雨と地震防災への意識の高まりの中で、谷埋め盛土への危険性を地域住民が訴えるのは必然的なことであります。

 このような中で中川村半の沢と大鹿村鳶ヶ巣沢への残土投入について、県は第三者委員会を発足させました。

 私たちはこれまでも、地域住民とともにこれらの候補地についてJR東海の計画に対して、谷埋め盛り土の安全性について、研究と学習を行ってきました。

 県は「第三者」の組織を立ち上げたとのことですので、二の組織の委員のみなさんにはJR東海の意見だけでなく、地域をよく観察してきた地元の専門家や私たちの意見についても陳述・懇談の機会を設定されるよう、強く要望するものです。

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 提出後若干の意見のやり取りがありました。

 対応した建設事務所の木下課長の、中川村の宮下村長も専門家の意見を聞く意向があるようなので、現地視察と準備会に出席してもらったとの説明に、桂川代表は、宮下村長は、盛土の専門家の意見が聞きたいのであって、今回の4名の委員の中に盛土の専門家はいないように思うと指摘。

 協議会側から、アカナギ下の置き場については、長年にわたって砂防対策をしてきたのは、対岸の水田などに被害が出ないようにということだと思うが、崩れるのを止める工事をしてきたところに残土を積み上げるというのはどうなのか。また、関係ない外部からやってきた事業に絡めて災害対策をすることでもあり、景観の保護の観点からしても、この計画の目的が不明確との指摘がありました。

 大鹿には別に要望を出して欲しいとの県の説明には、どちらの計画もリニアを推進するという県の立場からでたことではないかという意見も出ました。

 残土候補地が他にもあることから、他の場所についても同様の第三者による技術検討委員会を設置するつもりがあるかという質問に木下課長は即答はできないと答えました。

 JR東海はこれまで、住民説明会で、JR東海は専門家だから他の専門家の意見など聞く必要はないなどとってきたが、残土の安全性について住民が納得できる回答はされていないとの発言もありました。

 協議会側からの経費についての質問に、砂防フロンティアに支払う代金は1200万円で、お金はJR東海からでるが、支払うのは長野県という説明がありました。これについて、技術検討委員会の費用だけでも、長野県が負担すべきではないか、そうしなければ、「第三者」という公正、中立な立場が保証できないのではないかとの指摘がありました。委員は、それぞれが学者としての社会的評価に恥じない検討をするだろうとの見方もあります。しかし、リニアに関してみると、曲学阿世の徒と言われかねない説明を開陳した専門家があったこともまた事実です。大鹿村でも、大鹿村の名前でJR東海のお金が使われるようです。金額はおそらく半の沢と同程度と思われます。なお、砂防フロンティアのすることは、JR東海が行う設計(※)について検証、アドバイスすることだけで(「照査委託」というようです)、設計はしないとのことでした。

※ 別の機会ですが、JR東海が提示した残土置き場の設計をみて、JR東海は谷埋め盛土の設計ができないのではないかと指摘をした方もいます。