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2018年9月16日 松島信幸先生 講演

南アルプスを貫くリニアトンネル

 それではこれからお話をさせて頂きたいと思います。私は最近非常に年の関係ではきはきとしゃべれなくなっていることを皆さんにお詫びさせていただきたいと思います。年と言いますと、皆さん見て分かると思いますが、私80代になっていることはわかりますね。それが80代もあと2年でもう90代になるんです。だからたいへんまあどちらかといえばおバカになっています。で、いま、わかっていることは、昔の山を歩いたことや、そういう経験だけは記憶に残っています。それから、もう一つは、最近今年も大変暑い夏でした。6月7月と。暑い夏ですけれども、フィールドワークして、ま赤石の山じゃないんですよ、そこまではちょっと無理なんですが、この周りの地域、例えば天竜川に沿う地域だとかそういうところを歩いておると元気が出るのです。残念ながら、そういう歩いているときに私自身が困っているのは、私も私の家内も携帯電話というのをもっていません。昔人間なんです。そうすると、どこまで自動車で連れて行ってもらって、どこでむかえに来てもらうのかとういう連絡が非常に大変です。そういうことで、歩いていて気が付くことは、人間というものは、どこか一点だけは死ぬまで衰えないです。皆さんには、たいへん時々失礼するんですが、もう皆さんの人の顔、これは全部忘れてパーになってしまいました。親しい人まで忘れちゃいました。ただ外を歩くと、ああここではこういう問題があるんだよとうことは直感でわかるんですね。これだけは、年とともにますますさえてくるという感じがします。これだけは皆さんに、そんなことは大ウソだと思われないように、ちょっとそのフィールドワークした結果の、その一端を紹介して、まあ短時間で終わりますから、なにか問題があった点などは、気が付かれたら、後から指摘してしていただければ良いかと思います。

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 題目は、前にお知らせしましたように、「南アルプスを貫くリニアトンネル」ということになってましたね。というようなことは新聞や報道で皆さんよく聞きますよね。ここで一番大事な事、リニアトンネル、トンネルなんですよ、富士川から天龍川まで、だいたいその差し渡しは50㎞です。ここを皆さん注意してくださいよ。JR東海は50㎞とは一言も言っていませんよ。ああいうウソを平気で言えるという会社は、それを皆さん信頼しているんですから、困ったもんです。途中で2ヶ所、もっと詳しく言うと、山梨県側では3か所くらい、川を渡るとき外へ出るんです。鉄橋で。で、一番最後の時に、小渋川を、ここを絶対に橋をかけては困るよと、私はもちろんだけれど、地元の人たちの多くの声をそろえていったところだったって、橋なんです。そういうようなところは、これをですね、まあ結論みたいなことになりますけれども、そんなのに一般の人を、たとえ開通したとして、乗せていいんでしょうかという根本的なところを、大きく疑念をもっております。まあ、開通するときには、私もこの世にはいませんけれども、皆さんの中で何人かは長生きしているかもしれないけれど、それより、本当にトンネルが開くかどうかということは、大いに心配です。というのは、いまこの地域で、一番大きなトンネルを掘っているのは、三遠南信の青崩峠トンネルです。熊伏山の下を貫いています。今年中には調査抗は完成します。調査抗というのは本トンネルの時にどういう工法を設定するかということを全部決めるためのトンネルです。で、本トンネルはそれに沿って、その工法を忠実にやっていきます。で、時々私は検討委員会委に入っていますから、中に入るんですけれども、そうすると断層破砕帯の時には、ところを通過するときには、まあ、口で言ってもちょっと分からないと思いますが、えらいことになっています。けれども、そううことを全部クリアする工法を使って、たとえば、簡単に言いますと、断層破砕帯のときは、通過するときは、岩石はぐちゃぐちゃです。ようするに岩石の形がないです。でそういうところはどうするかというと、トンネル断面を時計のように真ん丸くするんです。真ん丸くして、上も下も四方八方、[アンカー]、それを20mとか30m、針のように周りに全部杭を打つんです。でコンクリートで固めるんです。リニアはそんなことをやる暇はありません。それから根本的に違うことは、熊伏山は花崗岩と変成岩です。赤石山地の場合は、日本でも一番若い堆積岩を通過します。一番若い堆積岩ということは、太平洋に堆積した地層なんですよね。それはまだ軟らかいんです。水をいっぱいに含んでいます。そういうことをお話したいんですけれど、いずれにしても現在、実際にトンネルの中に入った、リニアで計画しているトンネルはまだ開いていませんから、山梨県側で少し開いていますけれど、入ったことがありませんから、だいたい想像で話をさせて頂きます。ではそういうことで、ここのところで大事なことは、皆さん是非、これですよね、「リニア新幹線は・・・」、これに書いて下さい。書かなくても良い。心の中で言葉を入れてください。どう思っていますか みなさん、こんな大事なことを。

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 で、最近こういう雑誌が出ました。これです。でリニア新幹線を施工するにあたって、その二人の代表的な人物は、これだれだかわかりますね。いま盛んにしゃべっているでしょ。これ誰だか、これはちょっと分からないかもしれない。これがJR東海の名誉会長といわれて、ようするにリニアを推進することに命をかけているって本人は言っています。でも僕が、いま私よりずっと若いですけどね、でもリニア新幹線が開通するときには、たぶん生きていないだろうっていう無責任なことを言っています。ここに「夢か、悪夢か」って書いてありますよね。夢っていう言葉がね、非常にこの地域では浸透しています。どうしてかっていいますとね、ずーっと前です。もう20年余まえですね。この飯田はもちろん、この下伊那に関係する地域の小学生に対して、「夢のリニア新幹線」というカラー印刷をした、生徒が一人一人使う下敷きです。あの下敷きを全部配布しました。もちろんその配布した、お金の出元は良く分かりませんけれども、商工会という名前で配布しております。私の教え子が、大きな小学校の校長をしていたんです。それで、その夢のリニア新幹線というきれいな印刷された下敷きをもらったと。それじゃ、あまったのを1枚くれやと、貰いました。そうしたら、彼は非常に感激していました。まあ、ようするに、校長といえどもそのレベルです。

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 で、もうひとつはね、これは、この人はね、知っている人もおるかどうかちょっとわかりませんが、中馬清福という、こういう人です。ジャーナリストです。朝日新聞の論説委員をやっておって、退職したので、信濃毎日新聞社の、編集長になって、主幹と書いてありますか、主筆になって、信濃毎日新聞社に何年か務めていました。新聞の一面に社説より広く欄をとって、「考」というのをずっと連載しておりまして、で病気になって家にかえって、今はもうなくなっちゃったと思いますけれども、その中馬清福という人は、比較的よく、信毎新聞社のリーダー的な主筆をやっていた人ですね。その人がね、なんか数年前です、ちょっと鼎の公民館だかへ来てもらって話を聞くと言うことをちょっと計画しました。リニアじゃないんですけれども、原発のことです。そうした時に、一応あいさつにいかにゃいかんと私は思ったので、松本へちょうど会合があって、講演会があって、松本の大きな会場へきておるときに、私もまだ若かったのでそこへ行って、中馬さんに、彼が飯を食っておるときに、ちょっとお願いがありますのでといって、いったら、最初に彼が言った言葉、これは忘れません。信州の表玄関が長野から飯田に行くんじゃないかと私は思いましたと言うんです。これは何をいうのか、長野新幹線が長野駅にしょっちゅう止まりますから、まさに信州の表玄関は最北端の長野ですよね。そんな馬鹿な県が長野県にあるんですよ。誰一人下伊那の人も、文句を言いません。不思議な世界です。で同じようにちゃんと税金を納めていますね。で、そういうように、彼は最初に言いました。じゃあ、ちょっと飯田へきて話をして、まあ特に、原発の、なぜ原発かというとリニアを動かすために原発が2ついるっていうんですよね。中部電力と、例の新潟の原発のことですよね。で、そうしたらその後ですよね、飯田駅で話をした時に、ちょうど飯田の支社長が、これちょっと昔から知り合いだったので、なぜ知り合いであったかっていいますと、彼早稲田の地質を出とったんです。そういうことで知り合いだったんですね。で、その男が案内してきたときに、そのリニアのことは一言も触れませんでした。なぜ触れなかったか。もう新聞社の中で押さえたってことですね。信濃毎日新聞といえども信用できません。で、まあ、その後、この「考」のⅢ、最後の著書になりますけれどもね、これに、リニアのことについては、一にも二にも安全、当たり前ですよね。それから、都市圏では地下40m。これが最近問題になっていますよね。ここのことじゃありません。それから、南アルプス山岳トンネルで最大土被り1400m、これが大事なことです。

 この土被りという言葉はトンネル用語なんですけれども、山のてっぺんから、トンネルを貫くまでの垂直距離です。これはちょっと皆さん計算してください。1400mの下をトンネルで貫けるんですよ。これが、南アルプスの彼らの設計図を見ると2ヶ所あります。で、それで、その圧力。圧力というのは山の重さのことです。山の重さを、どういうように計るかといえば、垂直で計ってみて、つまりトンネルというのは、山の重さは上からだけかかってくるんじゃないってことくらいは分かりますよね。下からも横からもかかってきます。すべて、四方八方から、だから、危ない所は全部、四方八方全部手当をします。で、それで、その時にどういうことが起こるかということなんですね。これ今私が関係している青崩峠トンネルの場合で、2、3ヵ所、その現場へ実際入って見たことがあります。どういうことが起こるかっていいますとね、今、切羽へ人が立ちませんよ、大きな機械でもってね、先端に色々な道具が付いて、それを後方から運転してるんです。だから、その時になにかが起これば、これトンネル掘る技術者っていうのは、何か起こりそうなっていうことがだいたい感知できるんですね、感で。これがその技術者の一つの非常に大事な点です。だから、そういう時には機械を下げます。そうするとバサーっと落ちてきます。この落ちてくるのは、圧倒的に多いのは何か、水なんです。それと、水と一緒に砕けた岩石がバラバラバラと落ちてきます。こんなものに当たったらその機械だってやられちゃいますので、あらかじめ、落ちそうになってくる気配を感じますと機械を下げるんです。一回権兵衛トンネルの中で経験したのは、下げてもどんどんどんどん水が入ってきますから、坑道のなかは水浸しになります。プールになっちゃいます。だから機械をずっと坑口の方まで下げちゃいますよね。で、そういうことは当然、権兵衛トンネルでもあったし、青崩峠トンネルでもあったし、ましてや南アルプスを穴を掘った場合は、もっとすごいことが起こるはずなんです。その理由は非常に簡単です。例えば、青崩峠トンネルをつくっている岩石は、1億年くらい前にはもう日本列島の下へ来て固まっているんですね。ところが、南アルプスを作っている、つまり赤石山地の一番富士川よりは、たった100万年です。そのちょっと下がったところはたった200万年なんです。桁が違うでしょ。こんなところに、いったい何が潜んでいるかというと、それは水です。元の海水ですよ。で、たとえば、そんな山は日本列島の中に、南アルプスだけなんですよ。たとえば皆さんは、そりゃ日本の山は、穂高とか槍ヶ岳とか立山とか剣岳だとか北アルプスがシンボルだと思っているでしょ。あれはもう死んでいるんです。生きていません。ですけれども、南アルプスの山は、まだ山が最大スピードで隆起して、まだほやほやです。ほやほやということは何を物語るか。水が充満しているということです。山を支えているのは岩石ではありません。水なんです。で、こんなことを言ったったて、皆さん、トンネルの中へ、私だって、まだ、南アルプスのそんな穴を掘ったわけじゃないし、またそんなところへ入れてくれっこありませんし、もし入れてくれるといったら、それは怖くていけませんよね。まあ、じき死ぬでいいじゃないかと、じき死ぬんだからいいじゃないかと、いうことになるか知らんけれども、まあ怖くてしょうがないです、そんなものは。そんなことで加担したくはないですね。ですから、そういう意味において、これはちょっと皆さんのほうが頭がいいから計算してください。水は1グラム、水1グラムというのは1立法センチメートルのことでしょ、1立法センチメートルが1グラムですよ。そうすると1000mというと、その1000倍ではなくて、1000 かける 100 ということは、10万。1平方センチメートルあたり10万(倍)の圧力なんですよ。トンネルの面積はもっと大きいですよ。それぞれの1平方センチメートル当たりに、1000mで10万とすると、これ1400mでは、その1.4倍以上あるってことでしょ。そんな恐ろしい圧力を全て構造物で支えるんですよ。支えるためにはまあ完全に円形にしますよね。円形にすれば何とか支えられる。でも円形にするために周りの岸壁を例えば30mくらい全部コンクリートで固めるんですよ。ですから、そんなものを、たった何年で掘ると言ってる。これは掘れっこないことは分かっとってそういうことを言ってますけれども、それで、どうするんですかね。途中で止めてくれては困るですよ。もちろん、なぜ困るかっていうと、そこをいっくら埋めたったてね、水は絶対にもう地球がある限り抜けますよ。これは恵那山トンネルへ行って見れば分かります。今でもきれいな水が滔々と出てますよ。山体地下水というのは圧力がありますから、トンネルを止めたったって、抜け続けます。もう1気圧になっちゃうんですから。そんな10万気圧のようなやつが1気圧になれば抜けちゃうんですね。で、それですから、山はどうなります。緑深い南アルプスの山は死んじゃいますよ。そして大きな土砂崩壊、これはあちこちで起こります。で、そういうのは責任をとる場所はないわけでしょ。そういう現実をね、あの私がそういうことを、話しても、そんなことはないよって専門家はみんな言うでしょ。言うかも知らんけれども、そういうことを皆さんも判断することだと思います。どういう判断でしょう。そんなものが出来ても、僕は絶対乗りたくないよと、怖いから、怖いのは当然ですよ、何秒で通過すれば、崩れる前に通過する可能性があるから、それでいきましょうと、そういう人たちもおるかも知らんよね。そういうのを蛮勇ってうんですけどねェ。

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 いろいろまだ続くんですが、例えばドイツでは2008年に、方式はリニアとちょっと違うんですけれども、もっとも春日さんが調べたところによると、これは日本のリニアより優れているそうです。でも、騒音の関係とかいろいろあって、撤退して、上海へ売っちゃった。上海の市民もこんなのが街にきてくれては困ると言って、それは主に騒音だってきいてますけれども、ものすごい騒音ですよ。それで上海空港から上海の街の入り口まで、10分くらいで走るそうです。それからバス(地下鉄)に乗り換えて上海の街の中へ入るそうです。中国に出張に行った人が私の知り合いにおって、どうでしたって聞いたら、やっぱり騒音が酷かったよって言っておりました。それから、イギリスとフランスとの間に英仏海峡トンネルというのがあるそうです。誰か乗った人がいますか。これを造るにあたって、両政府の首相は一切赤字補填はやりませんと、その会社の責任でもってやって下さいといっている。その約束は今でも守られているということだそうです。それに対して日本は、なんかあとから出てきますけれども、3兆円の財政投融資をやると。だから、この借金を返すのは30年後だそうですから、さっきでた、あの二人の立派な人達ですよね、二人の顔が出てたおりましたでしょ、あの人たちは、僕たちはその時は死んじゃっているからいませんって、この雑誌に書いてありました、そういふうに。これは、いま言った私が読んだ本です。この本です。この本は本屋には売っていないということです。直接申し込まないと。690円です。

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 いよいよ南アルプスの方に入ります。山はなぜ高くなるかっていうことを、特集したときに、これは今日、たぶん、なぜ高くなるかってうことは触れません。ちょっと本題からそれますから。これはまた面白いんです。あの日本人ではね、こういうことを現地を歩いて、ちゃんとやっているのはほとんどどんな地質学者の有名な人でもいません。私はそこを4回歩きました。簡単にいうと、チベットからヒマラヤ、そこです。そこが関係するんですね、山がどうして高くなるかということについて。まあ、これはリニアとは関係ないので、こういう会合はないと思いますけれども。それから、赤石山地の場合、あの、皆さんはみんな南アルプスって言ってますよね。これはしょうがないです。だって国立公園の名前は南アルプスですから。でも私たちは赤石山地という正当な言葉を使っています。山地ってどういう意味かっていうとね、一つのエリアに対して、日本でも十指にあまる長大な河川と長大な山脈を複数擁する山域のことです。そういう山域、まさに南アルプスはもってますよね。南アルプスをあるためにはそれは大変なんです。全域を歩くということは。だって、天龍川はほんの一部です。でも大井川は一番源頭から海へ入るまで歩かなきゃなりません。安倍川も同じことです。それから富士川の支流がいくつもあります。そのうちの代表的なのが早川です。これも一番水源から富士川へ入るところまでは、歩かなきゃなりません。そういう馬鹿なことを、私も20台の前半から、毎年毎年やってきました。えーと教師をやりながら、そんな馬鹿なことがよくできたかなと、皆さん思うでしょ。それができるんです。学校休まなくてもやることはできるんです。ということは、夏休みというのが当時あったんです。ああ今もあるか。で、それから農繁休みというのもありました、その当時は。そういうときに、休みの第一日目から休みが終わる最後の日まで、家へ帰らないんです。だから、これは、いかにかあちゃんがあきれちゃったかなあということは想像にあまりあります。で、この中で年々高くなる証拠としてここにあげてある、3000mを越えている9つの山があるんです。ここから言いますと、北岳、間ノ岳、それから西農鳥岳、それから塩見岳、荒川中岳、それから赤石岳とか、聖岳までね、9つ。これ独立峰です。あのう、独立峰ってのはどういう意味かって言うとね、北アルプスには穂高岳の山はあれは奥穂だけ数えるんです。あと前穂だとか北穂はみな3000mありますよ。でも、一群の山脈の中のこぶですから。たとえば、槍ヶ岳も3000mあるでしょ、南岳なんて言うのはその続きの尾根なんですからね。ですからそれは一つの山っていうんです。同じように、たとえばこれは北岳って言っていたり、間ノ岳っていっているのは、その間に中白根岳ってあるでしょ。これみんな3000m超えてます。そういうようにね、一つの山域でも大きな山脈は、その山域の中にこぶがいくつもありますから、それ3000m超えてとるこぶはいっぱいあります。それを全部を数えるんじゃなくて、一つの山を一つの塊として数えると、北アルプスには、穂高、槍、立山、この3つなんです。で、赤石は9つある。ということは、裏返すと今も高くなっていると言うことです。それで、これ3年ばか前だったかな、国土地理院で標高を全部書き直したでしょ。四捨五入して。その時に北アルプスはそのいま言った3つの山は書き直しはしませんでしたね。


 で、この図面は、ここのところが一番高くなっとるよと、この飯田で、この南信濃地域になってますね、遠山地域。それから、この赤く塗ってあるところが、その2番目に高くなっているところで、この辺の黄色く塗ってあるところは変わりのない所で、今度はこっちの東京湾の方へ行きますと、こっちは逆に低くなっているところですね。そういうように、山っていうのは絶えず動いているんですね。成長したり、沈降したり、沈降ってのはこっちの方の山はないので沈降とは言わないですが。だから北アルプス、たとえば奥穂高なんていうのは今、岩場がいっぱい出ていますがあれ火山なんですよ。いま火山の気配なんてないでしょ。いま、もう火山のもとになっている花崗岩がもう出ていますからね。だから、あれはまあ末期的な山ですね。だから岩場がいっぱいあります。カキダニ花崗岩とか、それから黒部の方へ行きますと黒部花崗岩とか、100万年前の花崗岩があるということは、それより100万年より前は火山だったてことですね。で、それぞれ山にはそういう履歴がありますので、赤石山地は年々高くなります。ということは、トンネルを掘ることはできたとしても、年々トンネルの中は動くよってことです。それはその動きはミリ単位の動きですよ。レーザー光線で毎日、その変形を見てますよね、どのトンネルでも。でもそうすると、まあ仮に、トンネルが開いたとします、昼間は列車は通します。列車というのか、リニアを通します。夜は、そんな通す暇はありません。でもどっかに動きが活発になったといえば、何日も何日も休んで、そこへ補強をせざるを得んでしょ。酷いことになれば、何か月も休んで補強せざるを得ないとか、そういうことだって生じてくることがありますが、トンネルというのは出入り口が一番崩れやすいんですけれども、私が言っていることは出入り口じゃなくて、山そのものが歪んでくるということを言っているんです。2030年っていうことをよく言います。それは、東海、東南海、南海地震、こういうのが2030年にある。これは当たっているとかいないとかそういう問題じゃなくて、そのあたりに来るかも知れないよという程度の問題ですから、来ることだけは確実です。北ルプスにはそれは来ません。ですからそういう意味において、死んでいる山と、生きている山との違いなんですね。で、まあそんなことで、そういうとにかく危ないところを掘れば良いというだけの話を彼らは言うんですね。技術は年々進歩しています。それは確かです。でも、スイスのアルプスに、最近できた、57㎞のトンネル。でも、スイスの山は結晶片岩といって、もう水なんか含んでいない岩石なんですよ。日本の山は、出来たほやほやの山で、泥と水とそしてバラバラに砕けた岩石で、だから南アルプスは緑の山、奥深い山、これが延々とつながっている。という山が、スイスのみたいにあんなガリガリの山になるのはぜんぜん別世界なんですよね。岩石の違いなんです、それは。

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それで、これはちょっと概略の図で、意味わかります。太平洋側からこういうように日本列島の下へ潜り込んでくる。これはもうずーっと日本列島ができる、できて以来今日も続ています。で最近どんどん潜り込んでるのは富士川沿いの地層です。だいたい600万年から200万、100万年くらいまでの地層が、だから一番若い地層ですね、まだ完全に固まっていない地層ですね、それが潜り込んできています。そうすると、かたっぽうが、こっち側だけ潜り込んだとすると、日本列島がこれだとしますと、どんどんどんこっちへアジア大陸のほうへ押されていっちゃうわけでしょ。なのに、ぜんぜん押されて行かないです。逆にこっち側からの力がきとるんです。で一般の教科書を見ますとね、こっち側からの力はね、ユーラシア大陸からきていますよと、で日本海が開いていきますと、とそういう言葉がどんあな教科書にも載っていますが、じゃどこからこちらの力が来ているかとういうことは普通の教科書にはほとんど書いてありません。私はそれを調べるために、まあ何回かその大陸を、まあ自分一人では歩けませんから、国際会議みたいなのを利用して、まあそっちへ、見聞をひろめておったのですがね。だから両方からの圧縮力は、地球はそれを受ければ、上へ解放するしか手がないのです。ということで、南アルプスは上へ生きているんですね。これは確かに1年に、零点何ミリというかも知れませんが、それは確かに恒常的にそういう事件が起こるわけじゃないんですよ。ある時点の時に圧力が耐えきれなくなった時にバクっといくわけでしょ。一番の弱線のところで。それはどこだかなんていうことを彼らは調べてやったわけじゃないよ。

[ スライド7 ] = 配布資料「南アルプス林道バスから地層の逆転が見える

 じゃ、そういうことで、もう一つ。これは皆さんの手元にも資料を配ってありますが、白黒印刷の方です。南アルプス林道という、登山バスがありますよね。戸台からそれに乗って北沢峠へ行った人が何人かおると思います。それでね、その中でね、たとえばね、この白岩っていう、石灰岩の地層が、石灰岩のところには植生がないんですね、水が出ませんから。でこの辺のガレ場の中にカモシカの歩いた足跡がなんか見ることができます。私の友達が何人もこれを登っているんです。これ直接登るんじゃなくて、この谷のここから登っていって、こういくんですけれどね、私も行きたいと思ったけれど、もう体力がだめでいきませんでしたけどね。そうすると、だいたい、朝早く出れば、半日でここまで到着します。カモシカがいけるんだから人間だっていけます。それで、あの、それ本当なんです。私も若い時には、だいたいの沢をまあ特に大きな沢です。それを歩かなきゃ調査になりません。どっかに行ける場所があるんです。それを行ける場所を見つけるのはそんなに難しくないんです。カモシカに教わればいいんです。カモシカは絶えず、すごい所、難所へ行きますとね、あれは群れて走っていませんからね、単独で生きてますから、それがね、どっかへ集まってね、一緒に集まるんじゃないですよ、そしてそこの、カモシカだって四つ足ですからね、あれが登って行けるところを、また下って行けるところを、いろんな群れが、いろんな個体がそこに来るんです。だから、それを見つければいいんであって、それは簡単です。山に慣れていると。そういうことだけは自然に覚えちゃいますからね。で、こうやってここを登る時には、そういうところで、ここら辺にカモシカが足跡がいっぱい、こっちの人道からも見えるんですけれどもね。なんか、行った友達は、やー立派な道だったよって言っていました。それで、この石灰岩は、これが最初決めるまでは大変でした。これもともとこの石灰岩層が海底にたまったときには、こういう形で堆積するんです。まったくこの傾斜とは逆なんです。えー、どうしてそんなことが分かるのって、皆さん思うでしょ。私も最初わかりませんでした。そうしたら、だんだんだんだん、微化石の分析が進んできて、その静岡県側ですね、静岡県側は、あんまり変性を受けていませんから、熱を受けていませんから、そのこういう石灰岩でもチャートでもまたは泥岩でもいいんですけれども、そういう岩石を砕いて、またはフッ酸で溶かしたりして、そうしますと、その小さい顕微鏡サイズの化石が溶けた残渣(ざんさ)のなかに見つかるんです。それを電子顕微鏡で見ればいいんです。だから私も、飯田市へ博物館を造るときに、是非溶かす装置の、溶かすことのできる実験室と、そして、それを鑑定するための電子顕微鏡は備品として是非備えてくださいと言って、まあ、それは確かにあります。で、その学芸員がそれをやっています。ですけれども、小渋川ではその微化石が見つかりません。遠山川でかすかすに見つかるということです。小渋川まできちゃいますと、その変化、つまり造山運動による断層の影響が大きくて、つまり熱の影響を受けていて溶けちゃうんです。相手は石灰質ですからね。ましてや、ここはもう三峰川ですから。ただ私の経験では、もっと大きな化石、それは中生代を示すと、六射サンゴというんですけれども、それが残っている場所もありました。それからごく稀なんですが、白根三山の中の沢の中に二枚貝の残っているところもありました。ですけれども、二枚貝では年代が特定できません。だから、まあ六射サンゴを見つけたのが最初なんですね、その地層が若いよということを見つけたのがね。で、それまでは、なんか日本の地質、まあ役所というものは、みんなはよく信用しとるんでしょうけれどもね、信用しなきゃ始まらんからね。私がこの地域の地質図をつくるまでは、関東山地と同じ色を塗ってあったんです。ぜんぜん年代が違います。で、それどうして関東山地と同じ色を塗ったか。たとえば、こういうところに出てくる、流れてくる岩石を見ると、関東山地と同じような、まあ石灰岩もあるし、チャートもあるし、赤石のもとになった赤いチャートもあるし、すべて揃って同じ岩石なんですよ。太平洋の底にたまったそういう岩石は古生代から中生代、それから古第三紀まで同じようなものがたまっているんです。ですから、河原の岩石を見たったって年代は決まりませんけれども、その当時は誰も赤石の中に入って調査できませんから、それでその色を、地質図の色を関東山地と同じ色を塗っていたんです。同じ色を塗っとっても、誰もそれ調べる人いないんだから、それで日本地質図ができとったんです。で、ようやくこの辺の、つまり赤石全域の地質調査ができて、そして、その地質調査によって年代が決まりましたので、それで今のように、もうそれは訂正して、今の現在の地質図はちゃんと新しい年代観による地質図になっています。でも、そういうところのあの図面を見ても、それはあの松島という田舎の教師がその図面を作ったなんてことは書いてないので、まあどうしようもないね。えーと、そういう話をしとるとちょっと余分になるんですが。ここのところに、こういうように回転のマークが入っています。北側は回転しちゃっているんです。ひっくり返っちゃってるんです。だからこううように、もともと、こういう傾斜をしとったものが、こうなっちゃったんです。そうすると、逆に大鹿より南のほうへ行きますとこういう回転はありません。そして太平洋から、どんどんどんどん地層が重なっておりますが、その重なり方がこれが正常なんです。つまり、古い地層の下へ新し地層がどんどんどんどん潜っていくんです。これがその普通なんですね。それがここの軸を境にしてこう回転しちゃう。これ大きな造山運動の、造山運動というか山を造る地殻変動の証拠なんですよね。でもそういう証拠があるよということは普通の教科書には書いてありません。よく看板には書いてあるんですよ。南アルプスの看板には。

[ スライド8 ]

 まあ、そういうわけで、これをもうちょっと別の図にしたのが次の図だったと思います。あ、これですね。ようするに、日本列島を造っている太平洋側からの押してくる力は、ここに書いてありませんが、太平洋プレートってやつです。あの東日本の大震災を起こした張本人ですよね。それから私たちのところにはフィリピン海プレートってのが。この間に伊豆小笠原弧がありますので、これも、伊豆小笠原弧は太平洋プレートにのってできている。で、こっちの四国海盆のほうはフィリピン海プレートがこう。ですけれども、この2つの力関係を見ていただければわかるように、こっちのほうが大きいんですよね。だいたいこっちは、北は、えーと1年に10㎝位のスピードで潜り込んできます。こっちはその半分以下です。しかしこっちのほうがスピードが速いんですよ。で、だから東日本の数年前に起きた大震災は、地震学者が誰一人予知できませんでしたよね。こっちは、ある程度おおざっぱに予知できる。非常に規則正しく潜ってきてますから。そうするとそれに対して反対にこの力が大きいから、こういうような湾曲が出来ちゃっているんですね。ここにちらっと書いてあります。チベット高原から押し出してくる力と。

[ スライド9 ] = 配布資料「動いていく南アルプスに"リニア計画"はどうなんだ

 でそれを総合するとこの図になるんですね。なにか看板屋が描いたような図ですよね。これはしかしおおざっぱに描くとこうなるということです。細かい地層を一枚一枚描くわけにいかないので、こういう色は年代ごとに東へ東へと新しくなります。で、だいたいこの辺から北は、いまさっきひとつ前の図で示したように、ひっくり返っちゃているんです。このひっくり返るということを、なにか山を丁寧に歩けばわかる、そういうのが普通なんですがね、ところがこの地域は、山をいっくら歩いたって分からないんです。なぜかっていうと、地層は堆積するときに堆積構造というのがありまして、砂とかちょっと粒の荒い礫層みたいなものじゃなくてもいいんですが、砂とか粘土とかそういうものが繰り返し堆積しているとその堆積の仕方でもってどちらが上でどちらが下だってことがわかります。ところがこの辺から、つまり小渋川から北になりますと、それが変性を受けているために、熱を受けているために、熱と圧力ですよね、わからないんです。いっくらその拡大鏡で、まあ虫眼鏡を持って行ってね、一生懸命調べてもわからないんです。だから仕方がないので、同じ一つの地層を、こう北から南へ向かって、または南から北へ向かって、北から南へ向かって、繰り返し繰り返し追跡していくしかしょうがない。でも追跡していくっていって、地層がずーっと下がる、つながっていれば追跡できます。ところが、同じ地層でもつながっていないんです。要するに大根みたいな形なんです。大根だったって大根漬けにしてあるとつながっていないでしょ。大根漬け皆さん最近しなくなっちゃったからだめだか知らん。買った大根じゃわかりませんよね。だからこの辺の地層は全部大根漬けだと思ってください。それが、つながっている地層を、とにかく同じチャートならチャート、そういうものを、追ってきゃいいんですが、ところどころでつながらなくなっています。つながらなくなったときに、それじゃどこにつながっていくかその相手をまた見つければいいんですね。それはだいたい、沢を一つ一つ歩きつくすしか手はないんです。まあ、これは、馬鹿みたいだけれども、歩く人間にとっては、面白いんです。で、それでこんなようななんかわけのわからん図をつくりました。でも、学会へ持っていって発表したって誰も文句を言いません。どうして文句をいわんか。誰も歩いたことがないんだから、文句は言えるわけないでしょう。

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 赤石山地かっこ南アルプスの地下1200mから1400m、その超深度の破砕帯を満たしているものは、ここからが大事です、超高圧の山体地下水です。これがブワーと噴き出してきてそれに当たったら死んじゃいますよ。水の機関銃だと思って下さい。そしてそれが山を造っていて、山を支えていて、あの赤石山地特有の原生林が青々と隙間なく繁っているわけです。そこへ穴を貫けるっていうそんな馬鹿なことを、平気で、今の日本ていう国はそれを容認するんですか。それは、なんといっていいか分からんね。まあ、私は中学2年の時に、アメリカに降参して戦争に負けるのを肌で感じました。だから私の年の人はそういう経験があるでしょうけれども、こうやって見ても皆さんは、そんな経験のない若いほやほやの人たちでしょ。もう、皆さん自分では年をとったと思ってるんでしょうけれど、その屈辱的な、と言っても、日本のリーダーはちょっとも屈辱じゃなかったよね。自分で仕掛けた戦争なんですから。それで、あの、そういう、歴史的な経験を経た人間にとっては、次の歴史的なことは、もう間近じゃないかなー、しかしその形は戦争という形ではない。そこんところを、皆さんはどういうように感じるかということだけの問題です。で、その高圧なんです。これはすごいんです。要するに水の鉄砲だと思って下さい。鉄砲、大砲だと。これが山を崩すと同時に、トンネルの中を湖化してしまいます。で、その地下水がばらけた岩石の間隙を満たして3000m級の、これ3000m級のというのは、これは正確じゃないんです。赤石山地は8000m級なんです。これウソじゃないんですよ。私がホラ言ってるんじゃないんです。どうしてかっていうと、赤石山地を造っている底は南海トラフのマイナス5000mから立ち上がっているんです。そこへフィリピン海プレートが潜り込んでいるんです。そこから上へ押し上げられているんですから。だから3000mプラス5000mで8000m、地球上の山脈というのはだいたい8000mです。アンデス山脈にしろロッキー山脈にしろ。それじゃヒマラヤの9000mなんておかしいじゃないかっていうでしょ。それも間違いなんですよ。ヒマラヤを押し上げているのは、インドなんです。インド大陸は、あれは、海洋プレートとは違って、インド大陸プレートなんですね。それでそれはヒマラヤへこうシワリーク()の下へ入っていく時の高さが1000mの高さです。だから9000mマイナス1000mで、イコール8000mなんです。地球上のすべてのすべての、そういう基本的なものは、それはみんな同じなんですよね。惑星というものは、そんな異端的なものはありません。まあ、そううわけで、だから、いまのところ赤石は8000mなんですが、北アルプスと比べて下さい。岩場はほとんどないでしょ。山々は崩れずに年々に高くなっていますが、現在の姿です。で、水を抜いてしまえばどうなるの。山が生きているっていう表現は、動物と同じですよ。山が生きているってことは。動物の体へ穴を開けてくださいよ。体液は、その穴はトンネルですから、これは、トンネルを中止したったって穴が活きてますから、体液はその体が干からびるまで流し続けるわけでしょ。とんでもない話でしょ。でも今の技術はそれができるからやりましょうっていうんですから、そこがなんかおかしな話だとこう思います。

[ スライド11]

 で、そういうわけで、これはちょっと付録で。一番おかしいことだけを言います。まず残土をどこに埋めるか全くと言ってもいいくらい、ま下條村を除けば、全く決まってはいませんね。それで、「窪地」って言ったんです。是非皆さん窪地っていう言葉を、広辞林とかちゃんとした信頼できる字引をひいいて下さいよ。窪地というのは、周りより土地が低い場所で、水は、そこへ雨が降れば、そこは貯まって湖なってしまう、そういう場所です。私たちの周りに湖がありますか。小さくても湖があるそんな窪地がありますか。ないでしょ。そんなことは分かっていながら窪地を容認したんです。

[ スライド12 ]

それでね、私はこの地域は一応歩いています。これだけのところへ埋めろっていうんですけどね。埋める候補地で決まったわけじゃないんですけど、決まった場所は下條くらいですね。で、まあそういうところでいいますと、これは全部谷です。または、この土地では、結局谷のことを沢っていいます。または洞っていいます。沢や洞です。集落のすぐ上です。

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それからね、あるテレビ会社から問い合わせがあったんです。伊那谷では沢がつく名字や地名が多いらしいがって言うので、ああそうですねと答えました。それでここに、沢のつく名字は高森町の有線放送名簿、前に人殺し事件があって、その名簿が人殺しに利用されちゃったとかってね問題になって、今その名簿は使っていませんけど、家に古い名簿が残っていました。古い名簿から、高森町の沢や川のつくまたは谷がつく洞つく名字を抜き出すとこんなにあります。他の村だってこんなにあるはずですよ。それはいかに私たちの地域が複雑な侵食(地形)そのものだっということになるわけですよ。そういうわけで終わらせていただきます。ありがとうございました。


補足:用語説明

シワリーク:ヒマラヤ山脈の南側にある、西はインダス川から東はブラフマプトラ川まで幅8~50km,高さ900~3000m,全長1600kmにわたる丘陵。Sivalik Hills、Siwalik Hills。ネパールではチュリア丘陵(Churia Range)。シワリクという書き方もあるようです。

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