ストップ・リニア!訴訟ニュースの第11号ができました

更新:2018/04/12

 ストップ・リニア!訴訟ニュースの第11号ができました。PDF版


ストップ・リニア!訴訟ニュース

第11号 2018年4月10日

発行 リニア新幹線沿線住民ネットワーク
http://linearstop.wix.com/mysite

第9回口頭弁論 3月23日 不安と怒りの意見陳述

井戸水が枯れれば、農業が成り立たない(町田)

850人が立退き・土地売却、市民財産の高校移転(相模原)


司法記者クラブでの記者会見

東京地裁前集会マスコミも取材

 3月23日(金)午後2時30分から東京地裁で、ストップ・リニア!訴訟の第9回口頭弁論が開かれ、森和幸さん(東京都町田市在住)、桜井真理さん、浅賀きみ江さん(共に神奈川県相模原市在住)の原告三人が意見陳述しました。

 地裁前では午後1時15分から集会が開かれ、当日リニアエ事を巡る不正受注(談合)で独占禁止法違反で東京地検の捜査を受けていた大林組・清水建設一大成建設・鹿島のスーパーゼネコン4社と、既に逮捕されていた大成建設と鹿島の幹部2人が起訴されるという報道が紹介されました。

 午後2時からの傍聴券抽選には146人の希望者が列を作り、初回から9回連続で抽選が行われ、傍聴席はこの日も満席となりました。

 意見陳述で原告の3人はスライドを使いながら、地域の生活や市民の権利を奪うリニアエ事の中止を訴えました。

シイタケ栽培は井戸水が命森
和幸さんの意見陳述(要旨)

 私は町田市上小山田町で「森しいたけ園」という名前で農業を営んでいます。私の自宅裏にある山の下をリニア中央新幹線のトンネルが通る予定です。

 自宅の敷地から毎分20リットル以上自噴する井戸水を使い、野菜や原木シイタケをつくっています。飲料水や生活用水としても使っています。

 先祖代々農家をして野菜を作ってきましたが、私は40年ほど前から野菜の他に原木シイタケも作っています。

 シイタケの種菌を原木に植え付けることを植菌といい、この作業は1年に一度桜の咲く季節にしか行えません。

 菌が活着した原木を横木(ほだぎ)といい、植菌された椙木は山へ持って行き、菌回しという作業を行います。夏の間に山で横木作りをしたあと、秋口には横木を家に持って帰り、自宅脇から出ている井戸水でいっぱいにした水槽に横木を一晩浸けておきます。椙木を水槽につけた後、椙木をビニールハウスの中に入れ、シイタケが出てきたら収穫します。

 私の自宅は、リニアのトンネルの通過予定地から約50メートルの距離にあります。自宅から湧き出ている井戸水の水源の深さとリニアのトンネルの深さは重なっていますし、リニアのトンネル涌過予定地の方が私の自宅脇にある井戸よりも山側にあるので、掘り返しても水が上がってくるという事はないと思います。井戸水がトンネルエ事やトンネルの通過に伴い枯れることを心配しています。

 シイタケ栽培は、気温は摂氏25度前後の環境で育てるのが適しており、年間を通じて17度前後で保たれている井戸水とは温度差があり、シイタケの菌に刺激を与えることができます。井戸水は、塩素消毒された水道水にはない地中のミネラルが含まれていると言う性質を有しているため、シイタケ栽培に適しています。栽培が非常に難しく、細心の注意を払う必要があり、大げさに言えば、子どもを育てるような気配りが必要です。

 リニア新幹線は天災ではなく人が造るものです。そのために私やその子どもが仕事ができなくなったらどうしようかと不安に思っています。こうした不安を抱くことが無くなり、今後も町田市上小山田町の地で農業を続けて行けるように、裁判所には公正な審理を求めたいと思います。


 850人の地権者が困惑
桜井真理さんの意見陳述(要旨)

 橋本駅から10分以内の所に住む原告の桜井と申します。相模原市の橋本駅を中心として東西約6キロはリニアトンネルの計画ルートです。トンネルまでの深さ(土かぶり)は浅く、地面からわずか13m~40mの地下にトンネルが掘られます。そこには住宅地が広がり、橋本駅に近づくにつれマンションが増えてきます。リニアの駅をつくるために移転を迫られている住民と、トンネルルートの真上に住み、地下の権利の一郎売却を求められている地権者が約850人いますが、家族を含めれば被害を被る人はもっと多<なります。

 「半世紀もこの土地で生業を続けて暮らしてきた。」という怒りの声でした。「終の住み家と思って暮らしてきたのに、体も弱っているし今さらこの歳で引っ越しは辛い」と悩む年老いた方もいます。


 昨年マンションの杭がトンネルにかかるという理由で、2020年夏までに立ち退きを迫られる住民がいます。この話は事業説明会にはな<、あまりに急であり今までの平穏な暮らしを寸断されるのか!と住民たちは困惑しています。市の発表では、さらに2棟同じ理由で立ち退き撤去するマンションがあるとのことです。一民間企業が、自社の事業を優先させて、ここまで人々の暮らしを一方的に踏みにじってよいものか?幸せに暮らしたいという人々の当然の権利をこんなにたやすく無視してよいものか?

 2016年から2017年にかけてアンケートを取り、66人の方から回答をいただきました。不安の大半は騒音、振動、地盤沈下の建物被害、電磁波の影響、土地価格の下落を挙げる人もかなりみられました。説明会の存在を知らずに多くの人が説明会に行ってないことも分かりました。また、人数が多<て十分に質問できなかったという人もいました。

 リニアのトンネルは東京都町田市と神奈川県相模原市の間を流れる境川の下を、深さ約27mで通過します。流域は川が運ぶ土砂が堆積しており、元々地盤は柔らかい所です。境川は昔「暴れ川」と言われたほど氾濫を繰り返してきました。

 地下水の汚染、減水、枯渇の不安もあります。トンネルから100mしか離れていない豆腐の製造会社の社長さんは、「豆腐は水が命です」と訴えます。敷地内に複数の井戸を掘って安心安全な材料を使い、生協や多くの消費者に届けている大変信頼の厚い会社です。そのほかにも酒造屋さん、牧場(乳牛)の経営者、蕎麦屋さんなど食品に関わり水を第一にした生業を営む方々が不安に思っています。

 小倉ではリニアの走行による騒音について、JR東海は予測値を算定する際に、山梨実験線の騒音計測値をもとに算定しています。

 多くの住民の疑問を残したまま強引に地権者に対して土地売却を迫り、工事を進めるなどということは決して許されるものではないということを申し上げて意見陳述を終わります。


相原高校は心のオアシス
浅賀きみ江さんの意見陳述(要旨)

 私は相模原市東橋本に住んでいます原告の浅賀きみ江です。自宅は、リニアトンネルルートから約30mの位置にあり、浅深土トンネルの上に住む区分地上権者と同様に、リニア事業による地盤沈下、騒音、振動、電磁波などの影響をとても不安に思っています。


 私は1984年に都内から橋本に転居してきました。毎日のようにおやつを持って、ベビーカーを押し、子どもの手をつないで、市民に開放されている相原高校の庭に通いました。動物とのふれあいや豊かな自然環境の中で遊ばせていただいたことに、今も深く感謝しています。

 相原高校は1923年(大正12年)、篤志家20数名が土地と資金を寄付し、農蚕後継者を養成する神奈川県立農蚕学校として設立され、現在は、畜産科学科、食品科学科、環境緑地科、総合ビジネス科が設置され、農産物の生産から販売まで全てを学ぶことができます。 幼稚園や保育園、小学校の生徒たちも「動物とのふれあい」や「農業体験」などを行っていて、市民にとって自然だけでなく゛心のオアシス、にもなっています。

 この間、まちづくりの学習会や神奈川県教育委員会へ「相原高校を駅前から移転させないでほしい」という署名約5千筆を提出してきましたが、2019年4月の新校舎移転に向けて現在計画が進んでいる状況です。

なぜリニア事業のために移転せざるを得ないのか?「教育よりも目先の便利さや開発を優先しないで欲しい」生徒さん、数え切れない卒業生、保護者、教職員の方々のやり場のない悲しみと怒りの声を是非受け止めていただき、リニア事業の不当性を明らかにして頂きたいと思います。

リニア訴訟第4回シンポジウム
沿線住民の意見陳述の意義と今後の展望


 冒頭で関島さんは、リニアが「全国新幹線網の形成」とならず、全幹法の対象である新幹線にあたらず、認可手続きは鉄道事業法に基づいて厳格な手続きを行うべきであり、全幹法はその手続きを経ていないので違法であると述べ、これが第一の争点だと説明しました。

 また安全性と採算性の欠如についても大きな争点であり、さらにリニア関連施設(軌道、車両基地、変電所、駅、非常口など)の位置や設ll十図などが具体的でないのに環境アセスを短期間で行ったのは環境影響評価法違反であるなど、これまでの原告の主張について詳しく報告しました。

 原告側の意見陳述が今回でひとまず終了。被告(国土交通省)と「参加大」(JR東海)が、「すぐには反論の準備ができません」とこの1年半、全く何もしてこなかった事が明らかになりました。あきれ顔の裁判長が。「3回で反論をしてください」と言い、前回(1月19日)に決められなかった今後の日程がようやく決まりました。

 今後3回の口頭弁論は、被告の国と参加人のJR東海が原告側の主張に対する反論を行うことになりましたが、これまでの被告側の準備書面では手続き論に終始しており、リニア計画の内容について詳細な反論をするかが注目されます。

 3月23日の第9回口頭弁論のあと、午後4時半から衆議院第二議員会館で、第4回シンポジウム『沿線住民の意見陳述の意義と今後の展望』が開催され100人が参加しました。

 東京・名古屋間の沿線原告による意見陳述が一巡したことで、弁護団の関島保雄共同代表、横山聡事務局長、和泉貴士事務局次長による訴訟の中間総括として企画したもので、進行は川村晃生原告団長が担当しました。


 横山さんは、「大深度地下トンネルについてまだ関心が薄いが、一旦掘ってしまったら取り返しがつかない、そのことを訴えて行きたい。損害賠償裁判ではないので、是非サポーターを増やすよう努力してほしい」と述べました。

 また、和泉さんは「認可の元になった中央新幹線小委員会の20回の審議を再検証する必要がある」と述べ、「あいまいなものでも認可されてしまうことは許されない」として、審議経過を詳細に分析し今後の訴訟に活かす考えを明らかにしました。

今後のリニア訴訟日程(東京地裁)
6月25日(月)14:30~
9月14日(金)〃
11月30日(金)〃
地裁前集会 13:15~