JR東海が承諾なく残土置場候補地で希少種の移植作業、4月21日

更新: 2017/05/02

 4月21日、JR東海の環境影響調査を請け負う復建エンジニアリングの社員2名が豊丘村の本山生産森林組合の山林内の谷で希少種の移植作業をしました。JR東海がおこなった環境影響調査で希少種で生育環境が消滅するとされた種類について対策として移植を行うというものがあり、復建エンジニアリングの社員はこれを行っていたと思われます。このような作業は、県林務部の事前の承諾を得る必要があり、21日は承諾なく行われたものであり、飯田合庁の治山第1係はJR東海を指導するとのことでした。


復建エンジニアリングの社員の車(4月21日、11時32分、撮影。場所が特定できないように画面を加工しています)。


フロントガラスに表示された「環境調査中」の標識(4月21日撮影)。

 本山生産森林組合の山林は、リニア新幹線の伊那山地トンネル工事の坂島斜坑口と戸中斜坑口から排出される残土の置き場の候補地となっていて、現在、関係組織との協議中であり、水源涵養保安林指定の解除申請がJR東海からはまだ出されていない状況です。地権者の本山生産森林組合の山林が残土受け入れを承認したとしても、まだいろいろな手続きが行われている最中であって、今後、残土を置かない場合、JR東海が断念せざるを得ない状況もあり得るのですから、現在、希少種を採取して運び出したことは、単なる自然の破壊行為になる可能性が極めて高いといわざるを得ません。

 本山生産森林組合の山林の残土受け入れの決定の経緯についても、本当に代表権のある場で決定されたものなのかについて、一般組合員のなかには疑問を投げかける人たちがいるだけでなく、残土の受け入れに反対の意思表示をしている組合員もいます。このように、本山生産森林組合の山林に残土を置ける可能性はかなり危うい状態にあるといって良いといえます。

 JR東海の今回の移植作業の軽率な先行実行は、除山斜坑口での掘削開始と同様に、住民だけでなく、県や関係自治体からも、拙速と非難が出ることは必至です。

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同行の方が移植作業をする作業員を撮影した画像を提供してくれました。撮影時刻は、4月21日、11時25分。画像は一部加工してあります。この画像については「転載・複写禁止」です。

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その後の経過

 JR東海にこの件について電話で聞いてみました。JR東海の見解としては:

 県の環境部は以前(2)と同様のことの説明を聞きました。そこで、環境部自然保護課に聞いてみましたが、環境評価書に計画として移植があれば、違法ではないということでした。そこで、評価書などで種類を公表しないことは法律上の決まっているのかと聞きました。種類の公表をしないのは配慮であって条文にはないとの答えでした。

 では、工事が完全に可能な段階前に移植をしないという配慮もあって良いはずではないのか。 4月21日の段階でJR東海は保安林指定解除の申請をしていませんでした。まして、「地権者の承認」自体が怪しいものになっている現状です。JR東海は、住民になるべく情報を出さない「配慮」はしても、自然環境に対する「配慮」はないといえます。

 今回のJR東海の作業は明らかに「不当」なものですが「違法」ではないという非常におかしなことがまかり通っているのです。

 なお、南信州地域振興局(飯田合庁)の林務課の治山第1係によると、保安林内で行おうとするいろいろな作業については、この作業は許可がいるとかいらないとかの決まりがあって、作業をしようとするときは事前に作業の内容を具体的に林務部に説明して、許可がいるものかいらないものなのか相談をして確認を受けることになっているそうです。4月21日のことについては、相談はなくJR東海の判断でやったことなので、相談をするように指導したということで、JR東海は説明に来たとのことでした。

 ただし、事後ですからまずいですね。