安倍晋三首相は2月11日に米国の新大統領のトランプ氏と会談し、軍事、経済両面で日米協力の強化を確認しました。その中で、インフラ輸出として新幹線やリニアについて触れました。この会談について、リニア新幹線沿線住民ネットワークの天野捷一さんの文書を紹介します。

 超電導磁石を利用した磁気浮上方式の基本的なアイデアはアメリカで構想されたものです。しかしアメリカは開発を途中で止めました。経済的に合理性が認められなかったからです。テキサスの新幹線では用地を提供しないという地主がいます。また、新幹線車両はアメリカの安全基準を満たさないので規制のほうをかえようと働きかけているようです。JR東海の関連会社の日本車両製造はアメリカの子会社が車輛の設計ミスが原因で大きな損失を出しています。アメリカの鉄道産業の現場が2人の首脳の発想を容易に受け入れるとは思えません。(2月15日)


「アメリカでリニア建設を」
~安倍首相が日米首脳会談後の共同会見で表明

 安倍首相とアメリカのトランプ大統領は10日の首脳会談後、ホワイトハウスで共同会見を行った。会見の冒頭発言で安倍首相は、アメリカのインフラ整備への投資に関連して次のように述べた。

 「トランプ大統領のリーダーシップによって、今後、高速鉄道など大規模なインフラ投資が進められるでしょう。日本の新幹線を一度でも体験した方がいれば、そのスピード、快適性安全性はご理解いただけると思います。最新のリニア技術ならここワシントンからトランプタワーのあるニューヨークに、たった一時間で結ばれます。日本はこうした高い技術力で大統領の成長戦略に貢献できる。そして米国に新しい雇用を生み出すことができます」。

 アメリカへのリニア輸出については、JR東海は葛西敬之名誉会長を中心に米議会や州政府に対しロビー活動を行い、運輸大臣や州知事などを招いて山梨リニア実験線に試乗させる一方、安倍政権に対し米政府への導入要請を働きかけてきた。そして、2013年9月までに、JR東海はアメリカのリニア構想の一部であるボルティモア-ワシントンD.C.間60kmの先行開業のためリニア技術の無償供与を表明した。安倍政権もこれに呼応して同区間の建設費1兆円の半額5千億円を、国際協力銀行を通して融資すると表明した。

アメリカのリニア建設費丸抱えに税金を投入の可能性

 安倍首相は今回の訪米前に、アメリカの経済成長のため、インフラ整備を中心に51兆円を投資し、70万人の雇用を創出することをアメリカ側に伝えた。これまでも外遊の度にお金をばらまいてきた(安倍政権下で40兆円とも言われる)が、今回、51兆円も投じることが日本国民にとって新たな負担になり、また将来世代に大きな負債になるおそれが強い。昨年決まったJR東海への3兆円融資同様、日本政府は「融資でありいずれ返済されるものだ」と強弁するだろうが、明らかに税金投入であり、安倍政権の米一辺倒の外交姿勢を考えれば、建設費の無償供与も十分ありうるのだ。アメリカの将来を考える前に、格差や福祉切り捨てが進む日本社会の現状を見据えるべきだ。

 アメリカではリニアの有益性について議会でも、また国民の間で理解が進んでいない。ばか高い建設費、環境影響、安全性、電磁波など多くの課題が山積するリニアを米国民がすんなり受け入れるとも思えない。

国民無視、政民癒着のリニア事業の見直しを!

 国民に理解が得られない、JR東海という一企業と癒着したリニア新幹線の売り込みは止めるべきである。

(リニア新幹線沿線住民ネットワーク 天野捷一)